今年、台風来すぎじゃね?台風ソングについて
どうも、落第です。
突然ですが、作詞作曲の経験がある方に質問!
”台風”をテーマに曲を作ったことがありますか?
今年は災害が次から次に起こって、色々と疲弊してしまった人もいるのではないでしょうか。
そんな時こそ歌にするのが善という物。そう教えられてきました。
歌のテーマが飽和してしまっている今、新たな視点からのリリックは非常に重宝される時代。文章に目新しさがあるのでSNSで拡散される。
Youtubeで右端に縦書きで歌詞を表示したMVをアップすれば再生数40万は固い。
そして念願のメジャーデビュー。
次のリード曲を作るも、悉くファンの期待を下回る。
メンバーとのすれ違い。解散。
どうでしょう。新たな視点で歌詞を書いてみるだけでこんなシンデレラストーリーが待っている。最高かよ。
という訳で今回は、この記事を読んでいるあなたがいつメジャーデビューしても大丈夫なように、台風に関する曲をいくつか紹介していきましょう。
1. くるり / 台風
https://itunes.apple.com/jp/album/%E5%8F%B0%E9%A2%A8/373521052?i=373521270
いきなりマニアックな曲を紹介する。ワイルドすぎる。
そもそも「台風」って曲があること自体知らない人もいるのではないでしょうか。僕のiTunesライブラリには3曲入ってました(→Pia-no-jaC←、くるり、環ROY)
この曲はくるりの4thシングル「街」のカップリング曲なんですが、A面の街よりもポップで好きな曲です。というか街がクセの強すぎる曲だからポップに聴こえるだけなのか。
ただ肝心の歌詞に関しては、テーマはよくある感じの恋の話なんですよね。
恐らく幼少期に過ごしていた街で、青春時代には恋人と過ごした時代があって、それを回想しているという構成。
台風の空は何故か心地良かった
忘れないさ風の丘で赤い恋に手を振る
幼い頃って特に多くの人が感じてたと思うのだけれど、台風ってなんかワクワクするし、ちょっと外に出てビュンビュン吹く風にあたると、案外心地良かったりする感覚、あの感じを歌詞にしている歌ってほとんどないですよね。
岸田繁の歌詞は時期によって変遷が激しいですが、こういう庶民的な感覚に沿った歌詞を書かせると本当に天才だと思いますね。
くるりのカップリング曲は、2010年に「僕の住んでいた街」という2枚組のアルバムにほぼ全曲収められています。
個人的にはオリジナルアルバム聴くより聴きやすいと思うぐらい、意外と良曲多いのでお勧めです。「すけべな女の子」は本当に名曲。
毎度思うんですが、アルバムタイトルがわかりにくいですよね。カップリングコレクションとか付けてくれ。
2. キリンジ / 台風一過
https://itunes.apple.com/jp/album/%E5%8F%B0%E9%A2%A8%E4%B8%80%E9%81%8E/387861104?i=387861269
台風が去ったあと、ツイッターでは毎回「台風一過」というワードがトレンド入りしますよね。
キリンジは意外と僕の周りでは好きな人もいて、2013年までのいわゆる”兄弟キリンジ”は、後発のミュージシャンにも多大なる影響を与えました。
この曲は、そんな兄弟キリンジの最後の方の一曲。
聴いていただければ分かる通り、キリンジの中ではちょっと異色な曲なんですよね。
今思えば、弟・泰行の脱退後メンバーを5人追加した後の”KIRINJI”の作風に近いのかな。実際、6人体制で初めてのツアーでも披露されていました。
このBUOYANCYというアルバム自体が水をテーマに作られたアルバム(BUOYANCYは浮力という意味)で、全体的にハイファイなサウンドと開放的なサウンドスケープが特徴的な作品。
そんな中でも歌詞はやっぱり”節”健在といった感じ。
瓦が落ちてきて車の窓を割った
電線はちぎれてデタラメのダイアグラム
放課後の窓から吹きこぼれるハーモニー
この曲の作詞作曲は兄・高樹。後期キリンジはパッと見どっちの作詞か分からない。キリンジあるある~♪
先日の台風21号の後がまさにこんな感じでしたよね。変わり果てた街の中で人々は慌ただしく業務を再開している感じ。
あと時期設定も夏の暑い描写を細かく突いていて、流石。若者よ、キリンジに学ぶべきはこういう所だぞ。
余談ですが、私はキリンジで台風といえば、この曲よりも「雨は毛布のように」が思い浮かびます。
3. レミオロメン/ 電話
一応この記事を書き始める前に、この台風ソングまとめ記事的な物が既出かどうか検索してみたら、何個かあったんですが、この曲について言及している記事が全くなかったので、この記事を作りました。僕の中では「台風ソングといえばコレ!」と言ってもいいぐらい大事な曲なのです。
この曲はレミオロメンのメジャーデビュー曲で、何年後かに爆発的ヒットを生むベストアルバム「レミオベスト」にも収録されたので、知っている人は多いんじゃないでしょうか。
私もレミオロメンは世代ドンピシャで、当時レミオベストも持っていました。クラスの友達も何人か持っていました。
当時私が、テレ朝のMUSIC STATIONという音楽番組にゲロ嵌りしていた時、「メジャーデビュー曲特集」みたいなスペシャル番組があって、その中でこの曲が一瞬流れたんですね。
その時からこの曲が聞きたくてしょうがなくて、当時レミオベストはこの「電話」が聞きたくて買ってもらった覚えがあります。
この曲の何がすごいって、イントロ。イントロにすべてが集約されている。
コード進行的には、Emaj7→ Em6というループ。このEm6という和音が、このイントロ独特の不穏な感じを引き出すコード感で、ポップスではほとんど使われないコードなんですね(Em6に限らず、6thや13thを重ねる和音全般に言える)。
実際このループも弾き方によっちゃホラーBGMに使えそうなぐらい不気味。
Wikipediaを見ると、この曲からプロデューサーに小林武史が携わっていたそうで、このイントロもコバタケの手腕による物なのか、原曲のアレンジによる物なのか。分からないが、いずれにせよ名曲。
(ちなみに、小林武史さんは、Mr.Children、YEN TOWN BAND等のサウンドアレンジ等を手掛けるプロデューサー。ミスチルのプロデュースをして一気に名前が売れ、その後レミオロメンやlego big morlなど若手バンドのプロデュースを手掛けた人物。大袈裟すぎるストリングスや大衆性を意識しまくったアレンジを施した結果、様々なロックバンドを犠牲にしてきた。)
話が長くなったが、ようやく歌詞に触れていきます。
曲のテーマは、「遠距離恋愛の男女」。分かりやすい。
歌いだしからも分かるように、夏の暑い日に彼女の事を心配する彼氏の歌。何とも切ない。
肝心の台風に関する描写ですが、2コーラス目から始まります。
空梅雨の割には早い台風
そっちもそうだろ? 嫌な天気さ
ちょっぴり寂しくもなるね
風強く 窓が揺れる 受話器でつながって寝るまで話そうよ
このフレーズだけでもノーベル文学賞とれる。とれない。
遠距離恋愛って、まあ遠距離だとはいえ恋は成就しているわけで、幸せな感情もある程度あるはずなのに、この曲、暗すぎやしませんか。
この曲では、若さゆえの「この遠距離ずっと続けられるの...?」的な漠然とした不安みたいなのがサウンドによって表現されていて、歌詞が明るくタフなだけに余計切ない。
言っちゃ悪いけど、このカップル、多分この後別れる。
3. 松任谷由実 / TYPHOON
https://itunes.apple.com/jp/album/typhoon/1436012984?i=1436012996
先日、iTunesやapple musicを始めとする主要音楽配信サービスでの配信が解禁され、話題を呼んでいるユーミン。
私も恥ずかしながらアルバムを持っていなかったので、これは本当に嬉しかった。
ただ424曲は多いっすよ。まあ聞くけども。
さて、この曲は1983年に発表されたアルバム「VOYAGER」に収録されている楽曲です。
実はさっきのレミオロメンの電話と対象的な描写になっていて、個人的には合わせて紹介したかった曲です。
歌詞を見ていきましょう。
風の音で目覚めた夜明けは薄明り
あなたの肩にかけるシーツ
そっと腕をのばしてラジオをつけましょうか
もうそこまで来たタイフーン
場面は正に台風の朝。そして主人公は女性で、恋人と同棲していますね。このこの!
まあユーミンの歌詞は何となくフィクションっぽくは書いているから多分実話ではないですよね。正隆どうなんだ。
あなたがお茶を飲んでさよならを云う頃は
この部屋もひどい雨の中
ちっぽけな町じゅうが止まってしまえばいい
今日はどこへも行かせないわ
メンヘラにしか見えない。
やっぱり台風といえば、「どこにも行けない」という事実があって、さっきのレミオロメンもユーミンも、共通して描かれているのはその身動きのとれないという構図。
それが離れている恋人、同じ部屋にいる恋人という明確な違いがあって面白いですよね。
外は台風の中、恋人を独り占めしている幸福感に浸る女性の歌。
ただやっぱり、ユーミンの歌どれもに共通することではありますが、なんか幸せそうじゃない感じ、無表情なんですよね。この女性。なんとも言えない温度感の曲。
このVOYAGERというアルバムは、ファンの間でもべらぼうに評価が高い傑作ですので是非聴いてみてほしいです。
さて、最後にはなりますが、僕が知る中で最も人々の心情をリアルに描いた、台風ソングの最高傑作を紹介して終わりにしたいと思います。
「おいマジか、夕方から台風来るやん!
頼む、電車動いてくれ!家帰らせてくれ!(切実)」