しりとり名曲紹介 No.13 [SWAN SONG / ART-SCHOOL]
久々の更新。三月は色々忙しかったし、いっぱいライブに行きました。
2/22のGRAPEVINEと中村佳穂さんのツーマンから数えて、先日3/23のSANUKI ROCK COLOSSEUMまでの約1か月でだいたい15組ぐらいのライブを見られました。
音楽的にはかなり充実した1か月になったのですが、その分飛んで行った出費の事を考えるとお尻がひゅっとなりますよね。春なのに。
概要
・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。
・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。
・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。
(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。
2000年結成のオルタナ系ロックバンド。内省的で陰鬱な歌詞やローファイで歪んだサウンドが特徴。
結成当時のオリジナルメンバーに、日向秀和(現ストレイテナー、Nothing’s Carved In Stone)、大山純(現ストレイテナー)等有名なプレイヤーが在籍していた事でも有名。
ART-SCHOOLといえば、2000年代前半のロックバンドを語る上で欠かせない、いわば「ロキノン系」の金字塔の様なバンドでありまして、その系譜は近年のギターロックにも色濃く影響を与えています。
まあ、良くも悪くも。ね。
根暗ロックの伝道師
突然ですが、このバンドのボーカル木下理樹という男が、2chなどのネット全盛期だった2008年ごろから「きのこ」と呼ばれていたことをご存知でしょうか。
知っている方は話は早いですね。どうぞ読み進めていただいて結構です。
何故きのこと呼ばれていたかと言えば、ズバリ髪型がきのこに似ているから。はい悪口。
実は現在若者バンドマンの中で流行している、所謂マッシュヘアーとか亀頭とか包茎とかカントンとか言われているあの髪型の元祖がこの男、木下理樹なのです。
そう、こいつが諸悪の根源。代わりに謝っておきます。皆申し訳ない。
僕が中学の時、ニコニコ動画でART-SCHOOLの曲が流れると「きのこおおおおお」という弾幕が決まって流れていたのを今でも鮮明に覚えています。
こんな冗談通じなさそうな見た目の男を死ぬほどいじり倒せるのがネットの悪い所。
アートの人気がピークだったのが、この曲が出た2003年ごろなのかな。さすがにリアルタイムで追いかけてはいないので不確かですが。
当時はロッキングオンという雑誌の影響で、こういうオルタナと呼ばれるジャンルをやっているバンドが物凄く人気だったんですね。その波に乗った形で彼らもロッキングオンでは猛プッシュされていました。
何より革新的だったのが、この木下理樹という男の人間性。彼は本物の根暗。ナメてもらっちゃ困るぐらいの根暗。
バンドの総楽曲数は200曲近くあるのですが、全部歌詞が暗い。ネガティブだったり気怠さだったり、総じて否定的な歌詞を20年以上作り続けているのです。
加えて、声質も細く不安定な歌い方だったり、うつむきがちで猫背で歌う姿勢だったり、すべてが根暗という表現に結びついています。あと酒癖が悪いというおまけ付き。
このダメ男のバリューセットみたいな人間が、曲を書かせたらめちゃくちゃ綺麗なメロディーを作るんですよ。
おまけに当時のメンバーには日向秀和や大山純といった凄腕ミュージシャンが揃いも揃っていたわけですから、カッコいいに決まっているんですね。
そんなART-SCHOOL黄金期にリリースされたこの曲ですが、個人的には最高傑作と言っていいと思います。
のっけから「腐りきった感情で 僕は今日も生きている」と、節全開で攻めまくりの歌い出し。歌詞はやはり救いの無いまま終わっていくのですが、コード進行自体はGメジャースケール主体の明るめな進行になっている事によって、うっすら希望を感じるエンドロールのような楽曲になっています。
そして何より音が気持ちいいぐらいにローファイ。ひなっちが天才であることを嫌でも再確認させられるこの重低音。
この美しさと歪み切ったサウンドのブレンドは正に奇跡。ダメ男が天下を取った瞬間である。
愛すべきポンコツ
実はこの黄金期はそう長く続かず、この曲がリリースされた2003年に日向秀和と大山純の脱退、翌年レコード会社との契約終了。
その後はメンバーチェンジとレーベル移籍を何度か繰り返し、現在オリジナルメンバー(結成当時から在籍し続けているメンバー)は木下理樹のみとなっています。
この辺りから楽曲のクオリティだったり、歌唱力の低下などをネット上で叩かれることもあったのですが、世の根暗男子女子たちの生きる希望をそう簡単に見捨てられるわけがありませんよね。
近年のフェス対応型バンドの増加により、圧倒的に「他」を肯定するスタンスが主戦場となっているロックバンド界隈ですが、ART-SCHOOLは今も全くその真逆を貫くスタンスを変えることなく活動を続けています。
昨年リリースされたアルバム「In Colors」は、前述の黄金期のようなエモーショナルも感じられる傑作だったと思います。
現代のロックに脈々と受け継がれているギターロックの源流とも言えるART-SCHOOLを、是非とも愛してあげてください。
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今回はこの辺で。次回は「ぐ」から始まる名曲を紹介します。
きのこおおおおおおおおおおおおお