しりとり名曲紹介 No.16 [交信 / 赤い公園]
やっほー!落第です。
前回に引き続きガールズバンドを紹介しますよ。
概要
・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。
・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。
・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。
(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。
交信 / 赤い公園
2010年結成、2012年にEMIよりメジャーデビューした4人組ガールズロックバンド。
結成当初の音楽性はハードロックやシューゲイザーなどの音楽性を取り込んだ複雑な楽曲で話題を呼んだが、メジャーデビュー以降はポップスにより近付いたサウンドに初期の歪さを融合させた新しいジャンルを築き上げた。
2017年、ボーカル佐藤千明が脱退を発表。2018年に、元アイドルネッサンス石野理子がボーカルを後任することが決まった。
この楽曲は、メジャー1stシングル「今更 / 交信 / さよならは言わない」、1stアルバム「公園デビュー」に収録されています。
説明するだけで肩がつりそうになるバンドですが、このバンド、音楽オタクなら知らない訳にはいかない魅力だらけのバンドですよね。
特に作曲をしている人間ならほとんどが知っていると思いますが、ギター兼作曲を務める津野米咲さんの才能はプロの作曲家の方たちからも一目おかれているのです。
赤い公園が広く知られるきっかけとなった「NOW ON AIR」以降のポップで明るいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、あれは津野米咲のジキルの方です。
今回はハイドな津野米咲を紹介しようと思いますので、知らない方はぜひ目を通してくださいね。
変態
いつの時代にもロックバンドをやる人間の中には、過激なパフォーマンスをしたり支離滅裂な言葉を叫んでみたりバンド名に放送禁止用語を冠してみたりする輩がいて、そういう人たちが世間から変態と揶揄されることがあります。
しかし、僕は思うのです。津野米咲こそが、本物の変態だと。
確かに初期の楽曲「のぞき穴」や「透明」を聴くと色モノっぽい雰囲気はあるけれど、そうじゃなくて、コード進行の当てはめ方とか、ピアノ経験者なのにギターをやってるとことか、本当に深い音楽の本質的な部分での変態。
ウィキのプロフィールの所に「いわゆる音楽オタクである。」とか並の作曲家でも書かれないですよね。
今作の両A面の1曲目「今更」のような歌モノもめちゃくちゃキャッチーに作れるうえ、「交信」のようなポップスのセオリーには無い変則的なコード進行を入れた曲も作れる器用さ。しかも20歳そこそこで。
あと、シングルのカップリングにはカバー曲が入っているのですが、その選曲もなかなか変態なんですね。褒めてます。平井堅のPOP STARは名曲。
さて、津野さんがどれだけ変態か分かっていただいたところで、そろそろ本題の「交信」について触れていきたいと思います。
この曲の変態ポイントはサビのコード進行にあります。
プロも驚くコード進行発明家
僕が言うと偉そうな感じになってしまいましたが、本当にこの人の作るコード進行は常軌を逸していて、音楽理論の知識を持つプロのミュージシャンの方々も絶賛しています。
対談などで明らかになっているだけでも、亀田誠二さんや蔦屋好位置さん、ハマ・オカモトさんなど。多分もっといるはず。
1サビのコード進行の最初を見てみると、
近頃は / なみだ / 朝日が / きらきらで
F / Am / C / Dm
と続いていて、一見普通に見えますが、実際に曲を聴いてみると何となく違和感がありますよね。
この部分、実は超専門的すぎてブログに書けるレベルじゃないのであんまり込み入った解説はできないです。これ以上アクセス数が減ってほしくない。
なので、ここからはただの音楽オタクが早口で解説いたしますので、本当に興味のある人だけ画面を止めて見てください。ほぼスルーで大丈夫です。
まあ、あれですよ、セカンダリードミナントっていう移調する時に使う技法みたいなのがあって、この曲のキーってFじゃないですかー。だから最初はFなんですけどー仮にキーがCだとしたらFってサブドミナントになるんですよね?つまり最初のFはキーFに対するトニックコードと見せかけて実はCに移調してるんすよ。すごくないですか?
で、そっからFの代理コードのAmに移行してCに移行するんですけど、ここまでだったらキーCに移調したまま完結するように思うじゃないですかー。でも次Dmなんすよ。ここでキーがFに戻るんですよ。マジでやべぇっすよ先輩。一旦物語は平和に収束したかに見せかけてまだ続くんですよ。マジ西尾維新もビックリっすよ。天才のそれなんですよ。
こちらからは以上です。お疲れ様です。
要するにサビの頭では変わってないはずのキーが途中で変わってて、また元のキーに戻ってくるんですね。それが最初の4つのコードだけで高速に処理されてるからすごいというわけ。
これを狙ってやっているのか否かは不明ですが、一歩間違うと不安定な響きになりかねないような、王道から踏み外したコード進行を取り入れる津野さんの変態性が伝わったかと思います。
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ここまで赤い公園の天才性、能力の高さについて触れてきましたが、ボーカル佐藤千明の脱退という大きな転機が訪れた事により、バンドとしてのタフさが加わって、新体制の赤い公園がすごいことになっています。
現時点でMVが公開されている「消えない」「Highway Cabriolet」の2曲は、津野米咲さんのメロディーメイカーぶりが最大限に発揮された超キャッチーな楽曲に仕上がっています。何より石野理子のカリスマ性に惚れること間違いなし。
是非ご一聴ください。
今回はこの辺で。次回は「し」から始まる名曲を紹介します。