しりとり名曲紹介 No.17 [shower beige / Spangle call Lilli line]
世はあけおめムードでございますが、ゴールデンウィークが早くも終わりを迎えようとしています。心の準備はできていますでしょうか。私はできていません。
令和元年、一発目のしりとり名曲紹介は、久々のマニアック選曲でございます。
GW明けのダウナーな気分を癒すような透明感のある楽曲をセレクトしました。
概要
・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。
・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。
・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。
(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。
shower beige / Spangle call Lilli line
1998年結成、2001年にアルバム「Spangle call Lilli line」をリリース以降、約20年間インディーズで作品をリリースしているバンド。
まずこんな読みづらくて長い横文字のバンド名を所見で見て記事に飛んでくださったあなた、素晴らしいセンスをしています。
わしらスパングルコールリリーラインっちゅうもんでして、名前だけでも覚えて帰ってくださいね言うてますけども。
スパングルの特徴と言えば、ボーカル大坪加奈さんの浮遊感漂う声と、抽象的な単語が連なったような歌詞、ピアノとシンセが絡んだポストロック寄りのサウンドなどが挙げられるように、いわゆる普通のロックバンドとは異なる音楽性のグループと言えます。
この曲は2010年にリリースされたアルバム「VIEW」からの1曲。このアルバムはポップをテーマに製作されたアルバムで、同時期にリリースされた「Forest At The Head Of A River」というアルバムは、対照的に長尺でマイナーな曲が収録されています。
ここ最近このしりとり名曲紹介シリーズでは「ここがこうなっててすごいんだよ!」という風に、かなり事細かに理論立てて曲の解説をしていたんですが、この曲に関してはあんまりそういうのをしたくないというか、するべきでない曲だと思うんです。
この抽象的で説明のつかない感じがスパングルの良さなので、とにかく聴いて気持ち良いという事だけ理解してくれればそれで正解だと思います。
まぁ歌詞に関しては例によってまったく文脈のない単語を並べた感じなので、興味のある方は調べてみてください。
とはいえ、何かしら文字にして良さを伝えないとブログとして意味がないので、もうちょっとだけ彼らの良さを掘り下げていきたいと思います。
音楽は趣味
彼らの大きな特徴がもう一つあって、メンバー全員がデザイナーやカメラマンなど音楽とは別の本業を持ちながら活動しています。
本業の方で経済的に自立していて、音楽活動を趣味と自ら公言するほど自由度の高い活動を続けています。
メジャーレーベルに所属すれば、もちろんテレビやインターネット等様々な面で力を入れて自分たちを宣伝してくれる、いわば楽して有名になれる環境になります。もちろん実力は不可欠だけど。
ただその分、会社に貢献するために売り上げを気にしながら定期的にリリースや宣伝活動を休みなくしなければならないし、そもそも会社と契約した時点でメジャーデビュー=就職であるので他の仕事で生計を同時に立てるのは不可能なんですね。
彼らはそんな「売れれば大金持ち、売れなければ終わり」みたいなギャンブリング精神とか根性論みたいなやり方でなく、より地に足着いた自由なやり方で音楽を作っています。
スパングルはライブ活動が他のバンドに比べてかなり少なく、2010年にはライブ活動の休止も発表されました。2015年以降は年に数回ペースでしかライブを行っておらず、製作メインでの活動を続けています。
音楽一本で生計を立てるとすれば、音源の収益だけでは難しく、年1回はツアーを回ってグッズやCDを売って生計を立てなければいけないのが現実。バンドって普通の人が思っている以上にしんどいんですね。
もちろんスパングルのメンバーが楽をしているとかいう話ではなくて、本業はCDジャケットなどのデザイナーとして活動しているギターの藤枝憲さんは、インタビューで「僕の場合、音楽はガス抜きですね。12時間仕事でモニターを観てるんで。」と答えています。要するに音楽を仕事として成立させることの苦しみや大変さを分かっているがゆえに、あえて音楽とビジネスを切り離してよりダイレクトに音楽を楽しみたいという意志で活動していると言えますね。
僕は彼らのスタンスを大変リスペクトしていますし、そこら辺の売れることばっか考えて流行ってるバンドの美味しいところだけ雑に切り取ったようなジャンキーな音楽やってるバンドよりよっぽど売れてほしいと思っています。言うてますけども。
***
今回はちょっといつもより短めになりましたが、とにかく説明するのが野暮なバンドなので、聴いてくれ!という記事でした。
スパングルの曲はどれもゆったりとしていて、窮屈で忙しない日常社会を忘れられるようなトリップ感を味わえるので、最近の音圧ギッチギチなポップ音楽に耳が疲れている方も是非聴いてみてください。
次回は「じ」から始まる名曲を紹介します。お楽しみに!