【2020年】今年聴いた音楽を振り返る part.2 【4月~6月編】
2020年の音楽振り返り2週目です。
今年は去年に比べてマニアックな曲が多めですが、決して逆張りをしてる訳ではなくて単純に今年ヒットした曲が少なかっただけです。
香水?あれは去年の曲だよ。
藤井風 / 優しさ
今日本で一番陰毛が濃い事で有名なミュージシャン、藤井風。
昨年の振り返り記事でも取り上げましたが、思った通りむしろそれ以上の大躍進を遂げてくれました。ありがとう。
5月に満を持してリリースしたフルアルバムから3曲目の先行配信となったこの曲。彼の特色の一つであった岡山訛りは今回はお休みして、シンプルな言葉遣いで洗練されたポップソングに仕上げた印象。
ブラックミュージックに岡山訛りという強力過ぎる個性を見せつけた上に、普通に良い曲も作れちゃうぜ的な憎たらしさをひしひしと感じますね。いやらしか。
贔屓目抜きにしても、20代前半のデビュー間もない新人がここまでハイレベルな楽曲を作っちゃう時代になっちまったんだなと。
アルバムとしての完成度も素晴らしく、個人的には今年のベストアルバムと言えるくらい良かったです。
ラストの”帰ろう”という曲が特に好きで、普遍的なメロディの中に、風くんの死生観とかパーソナルな部分が垣間見える温かいナンバーでした。年下のくせに泣かせてくるんじゃないよ。
millennium parade / Fly with me
こちらも話題作だったのでご存知の方も多いのでは。
ミレニアムパレードといえばKing Gnuの常田大希を中心とする超本格派の音楽プロジェクトで、この曲はアニメ「攻殻機動隊 SAC_2045」の主題歌として起用されました。
King Gnuがいかに親切なバンドかを思い知らされる程の、難解さと音楽偏差値の高さをこれでもかと見せつけてきますね。一聴して”カッコいい!”とか、”良い曲!”というよりは、”すげぇ~…”みたいな。呆気にとられちゃうんですよね。アホだから。
ちなみにこの楽曲のライブ映像が公式で上がっているのですが、個人的にはMVよりもこっちを見た方が良いと思います。
演奏が超絶上手いのは勿論のこと、パフォーマンスが野性的でめちゃくちゃカッコいい。14人ぐらいの大所帯で演奏しているとは思えない一体感と、パワフルな熱量を体感できます。
MVは極めて人工的というか、あまりにも作り込まれ過ぎているので、ちょっと難解だなと思った方には、ライブ映像を見て頂きたいです。登場人物が全員遊戯王みたいな髪型してて面白いです。
世武裕子 / Capitalism
2008年アルバム「おうちはどこ?」でシンガーソングライターとしてデビュー、2011年頃から映画音楽、CMソングなどの制作を中心に活動している世武裕子さん。
1年ほど前に音楽好きの友達に教えてもらい以後よく聴いていたのですが、久々の個人名義での楽曲リリースという事でかなり期待して聴きました。
ぶっ飛びましたね。これが貫録というものか。
「資本主義」という意味のタイトル通り、日本の資本主義精神に対する批判的メッセージを込めた楽曲とのことですが、内容はまさかのインスト曲。
歌詞こそ無いけれど、音による感情の表し方が極めて音楽的で、クラシック音楽に近い表現方法だと思います。ヴェルディの”怒りの日”とかにも通ずる物があるような。
後から知った情報によると、ギターに田渕ひさ子(元NUMBER GIRL、toddle等)、ドラムに江島啓一(サカナクション)という絶品すぎる演奏陣によって録音されているようです。江島さん、こんなにアグレッシブなプレイもできるのか。
混沌とした2020年を象徴するような1曲だったと思います。ジャケットも皮肉たっぷりで良いですねぇ。
パスピエ / 真昼の夜
最近聴いてますか、パスピエ。えらいことになってます。
2011年「わたし開花したわ」でインディーズデビュー以降、”アート”と”ポップス”が融合した世界観が話題になり2015年にはメジャーデビューから約2年で日本武道館でのワンマンライブも成功させた超実力派バンド。
去年辺りから”アート”の側面がより強くなってきた印象で、この「真昼の夜」もかなり挑戦的な内容。
もうどこから転調したかよく分からなくなってくる、めまぐるしいテンポチェンジと聴いたことのないコード進行の応酬で、一秒先も予測できないスリリングな展開。よくこんな曲作れるよなぁ。
かなりトリッキーな内容なので、一見すれば滅茶苦茶に作っているようにも聴こえますが、成田ハネダさんのアカデミックな音楽知識とポップセンスもちゃんと残っていて、奇天烈なんだけどどこか哀愁を帯びているような不思議な曲調になっています。
最近のパスピエ、本当に素晴らしいのに音楽オタク界隈でも全然騒がれていないのが凄く残念。今こそ聴かれるべきバンドだと思っています。
小山田壮平 / OH MY GOD
2014年に解散したロックバンド、andymoriのギターボーカル小山田壮平。
解散後は別バンドALと並行してソロ活動を続けており、新曲をYouTubeにアップしたりとコンスタントに活動していましたが、意外にも正式な音源リリースは今年が初めてだそうで。
この曲は映画「#ハンド全力」の主題歌で、青春映画らしいオープンワールドな世界観が特徴的。
小山田ソロ以降の楽曲はわりと内省的で暗めの曲が多かったので、この曲は凄く新鮮で好きですね。数歳若返ったようなキラキラ感を纏っている気がしました。
録音も、恐らくめちゃくちゃコンディション良かったんだろうなぁと思える出来の良さでした。もうクスリなんかやるなよ。
今年の10月にリリースしたフルアルバムの内容も非常に素晴らしかった。andymoriとALのどちらにも属してない音楽性で、全体通して開放感に満ちている良い作品でした。
Johnnivan / Bushwick
今年の新人バンド枠、お待たせしました。
2018年結成、日本・アメリカ・韓国のメンバーからなる多国籍バンドで、2018年にJohnathan Sullivan(Vo.)とShogo Takatsu(Key.)を中心に結成された。
ボーカルがネイティブというアドバンテージも兼ね備えながら、周りを固める演奏陣も1流揃いで、既に結成5年目ぐらいの貫録があります。キーボードの方、成田ハネダ感ありますね。
USインディーとダンスミュージックが融合したような、気持ち悪いけど踊れる不思議なサウンドが特徴的。Radioheadっぽい不穏なコード感とダンスビートが融合した感じの、今まで聴いたことのない音楽性を確立していて凄くツボでした。
この楽曲が収録されている1stフルアルバム「Students」は、今年のアルバムの中でもかなり好きでした。”Calm Down”という曲が特に気に入っていて、YMOチックなシンセサウンドとUSインディーの質感が合わさって、踊れるサイケとも言える新しいジャンルを開拓できていると思います。マジで凄いです。
正直デビューアルバムでこのクオリティにしては、注目度が低すぎて歯痒いところ。コロナ禍真っ只中にリリースを控えていた事もあり、アルバムのリリースも2か月ほど延期になったようです。運が悪いという一言で片付いてほしくない良いバンドなので、紹介させて頂きました。要チェッケです。
吉田一郎不可触世界 / えぴせし
ラスト7曲目、本当にここまで見てくださってありがとうございます。
2007年、ZAZEN BOYSにベーシストとして加入し一躍有名になった変態、吉田一郎氏が2015年に立ち上げたソロプロジェクト「吉田一郎不可触世界(よしだいちろうあんたっちゃぶるわーるど)」。
5年ぶりの新作「えぴせし」から表題曲を紹介したいと思います。
タイトルの”えぴせし”は、ドイツ語の"EPITHESIS"(エピテーゼ)から来ているようで、エピテーゼとは医療用具として体に取り付けられるもの(義足や義手もエピテーゼの一種)を挿す言葉だそうです。ただし楽曲の内容とはそれほど関係ないようです。
公式サイトに載っていたライナーノーツによると、この曲のサビのメロディは2000年頃に組んでいた前身バンドの楽曲からの引用だそうで、レコーディングもされる予定だったが歌詞が思うようにハマらずボツにしたそう。
恐らくこの前身バンドというのは”12939db"というバンドで、こちらは4年ほど前に突如YouTubeに当時のデモ音源が何者かによりアップされ、コアな音楽好きの間で話題になった伝説のバンドなのですが、このデモの中から数曲が既に”吉田一郎不可触世界”の楽曲に引用されています。
前置きが長くなりましたが、この引用されたサビのメロディが超良いんです。ド直球の泣きのメロディ。
ZAZEN BOYSで仏頂面して超絶技巧ベースを弾いていた姿からは想像もつかない情緒豊かなメロディセンス。
吉田一郎不可触世界の楽曲には、ある種”酢豚の中のパイナップル”的な良さがあると思っていて、ディープでドロドロしたサウンドの中で、切ないキラキラしたメロディが鳴る事によってより際立ってエモーショナルに響くんだと思います。
この感覚は、もう吉田一郎不可触世界でしか味わえないです。聴けば分かる。
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上半期編はこれにて終了。4月~6月はまだまだ紹介したい名曲たくさんありました。
宇多田ヒカルの「Time」とか、トクマルシューゴ「先世の振り子」などアンセムがたくさん生まれたクールでしたが、厳選して紹介させて頂きました。
来週から下半期編もお楽しみに。ありがとうございました。