【2020年】今年聴いた音楽を振り返る part.4 【10月~12月編】
おはようございます。2020年最後の更新になると思います。
少し長めですが、どうか最後までお付き合いください。
KID FRESINO / No Sun
1993年生まれのヒップホップアーティストKID FRESINO。
2018年リリースの3rdアルバム「ai qing」は翌年のCDショップ大賞の優秀アルバムに選出されるなど各方面から高評価を得た。
こちらは来年リリース予定の新作アルバムからの先行シングル。
まぁ、とりあえずこの楽曲に参加している演奏陣を見て頂きたい。
- 佐藤優介(Keyboards)
- 斎藤拓郎(Keyboards / Yasei Collective)
- 小林うてな(Steelpan, Chorus)
- 三浦淳悟(Bass / ペトロールズ)
- HSU(Bass / Suchmos)
- 柏倉隆史(Drums / toe, the HIATUS)
無理。勝てません。
全部伝説のポケモンでパーティー組んでるようなもんですこんなの。
もうこのクレジットを見ただけで、次のアルバムが如何に気合いの入った作品なのか分かるほどの強力なメンツ。
ドラマーに関しては前作で参加していた石若駿さんとのタッグもかなりハマっていましたが、やはりレジェンド柏倉さんのドラムと合わさった時の気持ち良さは秀逸。
曲としても、やはり頭一つ抜けている完成度と言わざるを得ないでしょう。
前作「ai qing」で見せたポストロック的なアプローチもありながら、よりシンプルで洗練された演奏とリリックになっていて、壮大かつ熱量を感じる仕上がり。
「TMGE 積まれたアンプが踏みつけるtatu」とか、意外と面白いフレーズが隠れているのも良きです。
単なるオシャレに落ち着かない、底知れぬ緊張感。堪りませんなぁ!
CAT ATE HOTDOGS / ヤドカリ
皆さんお待たせしました。2020年期待の新人バンド枠です。
平均年齢21歳、大阪にて結成されたCAT ATE HOTDOGS。昨年アマチュアの音楽コンテスト「十代白書」にてグランプリを獲得し、密かに注目を集めているロックバンド。
私の記事に度々登場する音楽好きの友人から教えて貰ったこのバンド。いつまで経ってもこういうセンスの塊みたいなバンドが全員年下になってきたのが慣れない。新鮮に落ち込みます。
ド頭からテンションコードを多用したカッティングギターが印象的で、全体のアンサンブルもかなり複雑。2本のギターの絡みが非常に凝っていて、パズルのように構築されたフレーズがぴったり噛み合う快感が堪らなくエロいです。
歌詞も非常に練られていて、固めな文体なんだけど難しすぎない絶妙なバランスで成り立っています。
他の曲も聴いてみて感じたのは、全体的に”音モノ”に近い作り方をしているという点が新しいと思いました。サビのメロディに重点を置くことの多い”歌モノ”的なアプローチではなく、ギターのリフだったり演奏のアンサンブルを中心に展開している曲が多いので、そこを感じながら聴くとよりこのバンドの良さが分かるのでは。
若手バンドの中では割と群を抜いたテクニカル集団です。絶妙に華が無いのも◎。
松任谷由実 / 知らないどうし
先ほど紹介したCAT ATE HOTDOGSとの年の差はなんと45歳。どっちもすげぇ。
ドラマ「恋する母たち」の主題歌として書き下ろされたこの楽曲は、久々のラテン調のサウンドが特徴的なナンバー。
1993年のアルバム「U-miz」を想起させる、じっとりとした大人の恋愛を落とし込んだ楽曲。この手の楽曲は正にユーミンお得意と言わんばかりの”節”が炸裂しまくっています。
ここ数年のユーミンは特に声が良くて、48年間ずっと最前線で活動してきたミュージシャンしか出すことのできない、使い古された味が染み出ていると思います。
12月にリリースされた4年ぶりのアルバム「深海の街」も非常に素晴らしく、2020年という混沌とした1年を、ファンタジックな世界観を交えて音楽に昇華している最高のポップアルバムでした。
青葉市子 / Porcelain
1990年生まれ、京都出身のシンガーソングライター青葉市子。
主にアコギ弾き語りの楽曲を中心に、2013年には大手のVictor Musicからデビューしている隠れた実力者。
青葉さんの活動は割と初期から追っていて、今年は久しぶりの活動だったので期待していたのですが、正直その期待を超える素晴らしい作品でした。
ワルツ調のリズムとジャズ系の複雑なコード進行に乗せて、深い森を彷徨っているような没入感と神秘的な空気感が漂っています。メッセージ性のある歌ではなく、一貫して風景描写に徹した楽曲。
いわゆるJ-POPのようなメロディやコード進行は一切使われておらず、異世界に居るようなトリップ感がありながらも、どこか日本的で懐かしさもある不思議な感覚に陥りました。
ジブリ映画のサウンドトラックのような、日本の原風景を想起させる音楽が好きな人にはドンピシャだと思います。ジブリみたいな邦楽って超新しくないですか。
11月にリリースされたアルバム「アダンの風」は、国内のみならず海外からも絶大な評価を得た大名盤でした。
更に深化した青葉市子さん、是非トリップしてみては。
くるり / 益荒男さん
1996年結成、今年デビュー22周年を迎えたベテランバンドくるり。
今年は未発表曲を集めたアルバム「thaw」のリリースに始まり、ライブツアーの中止を補う形で沢山の楽曲をリリースしてくれました。本当にありがとうございました。
5月には大阪でGRAPEVINEとの対バンライブが予定されていて、私もチケットを取っていたのに中止になってしまいました。この事は一生根に持つのでどうかお付き合いください。
そんな中、約2年ぶりの新曲となったこの益荒男さん。久々にキレッキレなくるりが帰ってきたぞ。岸田繁が怒ってる時は大概世情が荒れている時です。
スカと昭和歌謡をブレンドしたような軽快なリズムに乗せて、旧仮名遣いを用いた古めかしい言葉でとにかくディスってます。だいぶ危ない事も言っている気がするんですが大丈夫なんでしょうか。
アニメーションもポップで可愛らしく仕上げていて、出来る限り隠そうとしていますが隠しきれてないぐらいヤバめな歌詞です。岸田さん、2020年は思う事もいっぱいあったんでしょう。
どうやら明治時代に流行した”オッペケペー節”という歌が元ネタらしく、歌詞も一部そのまま引用したりされているようで、皮肉だけでなく教養も備えているのが流石と言ったところ。
単なる風刺にとどまらず、ポップスとしてちゃんと純度の高いクオリティに仕上げられていてとても好きな楽曲でした。サビが普通に美メロなのも最高。
坂本慎太郎 / ツバメの季節に
いよいよ最後。ここまで読んで下さった皆様、本当にありがとうございます。
最後は日本の音楽シーンに数々の名場面を残してきた偉人、坂本慎太郎さんでございます。
1998年ロックバンド”ゆらゆら帝国”でデビュー。2010年にバンド解散後ソロ活動を開始し、現在までに3枚のアルバムをリリース。
ゆらゆら帝国の時代から、メディアへの出演は一切ないものの音楽雑誌などでは絶大な評価を得続けており、邦楽を語る上では欠かせない存在と言える方です。
今年は2曲入りのEPを2か月連続でリリースし、その4曲のうちの1曲がこの”ツバメの季節に”という楽曲。
コロナ禍以降に製作されたというこの曲は、歌詞の内容もコロナ以降の心境を匂わせる内容になっています。
個人的に坂本慎太郎ソロ以降の楽曲には、ゆら帝の頃とは違う種類のヤバさがあると思っていて、ゆら帝の頃が”ナイフを持って暴れている”類のヤバさだとしたら、坂本慎太郎ソロは”その辺の池で釣りをしている無害そうなおじさんが実は人を2,3人殺したことがある”みたいなヤバさ。
何というか、表面的でないにしろ底知れない狂気が渦巻いている曲が大半なんですね。
この”ツバメの季節に”も、一見シンプルに感じますが実は面白い音作りをしています。
途中から入るサックスの音がかなり効果的で、ミニマルな他の音色と比べてちょっと浮いているような聴こえ方をしているんですね。このちょっとした違和感が、俗世から切り離された孤独感のようなものを上手く表現しているように聴こえました。
歌詞の内容も、正にコロナ禍の心境を歌っているように見えて、実は昔から歌っているようなテーマとあまり変わっていないんですよね。
音楽や普段の生活の中で感じる普通の人たちとの”ズレ”を、憤るわけでも嘆くわけでもなく「参ったな~」みたいなテンションでしっぽり歌っているような人。
その”ズレ”がこのコロナ禍でより表面的になっただけで、坂本さんの中では常日頃抱えていたものではないかと勝手に思っています。
2020年という長い映画のエンドロールの様な、潔さと呆気なさに浸ってみてはいかがでしょうか。
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曲の紹介は以上。再三になりますが最後まで読んでいただき本当にありがとうございました。
完全な趣味でやってますので、完全な趣味で読んでくれている方が居るだけで勝手に励みになってます。
今年は色々と忘れたい事、忘れられない事があった1年でした。
どんなに偉い人も、好きな人も嫌いな人も、自分も、それなりに困ったし落ち込んだと思います。
僕は元々人に会うのも億劫な性分のくせに、人に会うのを控えましょうと言われるとどうも寂しくなったりして、結局1人では生きていけない事も痛感しました。
あと、正義のヒーローなんて居ないんだなと思いました。当たり前なんだけど、分からない事は誰も分からないし、音楽じゃ何の解決にもならない事も明け透けになっちゃったような。魔法が解けた、とでも言いますか。
四半世紀前のような、神格化された絶対的なエンタメの象徴としての”音楽”ってものは、もう見る影も無くなったんだと思います。
ただ僕は、きっと地球の半分が無くなっても音楽を聴いてるだろうなと思うし、どれだけ音楽が価値の無いものになろうが、僕はまんまと音楽に救われ続けて生きていくんだと思います。
馬鹿みたいだと自負しているが、こういう生き方しかできない奴も居るんだよ。
この先どうなるかは分からないけど、少なくとも現時点で世に存在する音楽は未来永劫何があろうと無くなる事はないので、そのうちの幾つかはブログなり何なりで紹介していく形になると思います。
勿論自分でも曲を作って聴かせていくつもりです。結局何も変わりません。ざまぁみやがれ。
長くなりましたが、最後に今回紹介した全25曲をまとめたプレイリストを作りましたので、リンクを貼っておきます。
ブログでは紹介していませんが洋楽のベストトラックも全25曲同梱しております。興味がある人は聴いてみてね。
↓↓↓Apple Musicプレイリストはこちら↓↓↓
泰地 土居の「2020年Best Tracks」をApple Musicで
それでは皆さん、良いお年を。ありがとうございました。