諂諛

音楽好きによる音楽好きの為の雑記。

2021年下半期の良かったアルバムを紹介するよ 【邦楽3選・洋楽3選】

 

皆さんごきげんよう。今年の冬は寒いですが、いかがお過ごしでしょうか。

 

2021年も間もなく終わりますが、筆者は相変わらず音楽を愛し抜いた1年でした。もうほんまに好っきゃねんな。ズッ友やねんな。

 

皆さんはどうせ音楽なんかもうとっくに飽きて好きなYouTuberばっかり見てると思うので、筆者が隅々まで聴き尽くした音楽の中から特に良かったアルバムの中から数作品ピックアップし紹介するという神企画でございます。

 

上半期編に続き、下半期も名盤揃いでした。シャイニングスターばっかり聴いてないで色々聴いてみよう。

 

 

折坂悠太 / 心理

 

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まずは下半期の最ベタから。まさか知らないとは言わせないぜ。

 

このブログでも何度か取り上げたことのある新世代シンガーソングライター折坂悠太氏の3年ぶり3枚目のフルアルバム。

 

前作「平成」が2019年のCDショップ大賞を受賞し、翌年発表されたシングル朝顔はドラマ主題歌としてロングヒット。尖った音楽性ながらしっかり大衆に届くソングライティング力を持っている彼の3年ぶりのフル作は、間違いない名盤でした。

 

元々2020年にリリースされる予定だった今作は、コロナ禍の影響で製作が一旦中断。製作再開に当たり収録曲も変更され、先行シングル「トーチ」「春」の2曲も新たにレコーディングし直された経緯があります。

楽曲自体はコロナ禍以前に作られた楽曲が多いので、歌詞や表現に大きな変化がある訳ではないけれど、より新鮮でリアルな彼の心理をパッケージングしている事もあり、アルバムを通して緊張感が伝わってきます。

 

何よりシンプルに1曲1曲の完成度が素晴らしく、全13曲という大ボリュームな内容にも関わらずあっという間に聴き終えてしまいました。

個人的には中盤の「鯱」からの「荼毘」の流れがめちゃくちゃ好きですね。折坂君の物凄く深い部分を覗いている気分になります。

 

 

State of Mind

State of Mind

  • 折坂悠太
  • J-Pop
  • ¥2241

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D.A.N. / No Moon

 

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櫻木大悟(Gt,Vo,Syn)、市川仁也(Ba)、川上輝(Dr)の3人からなるオルタナティブバンドD.A.N.の3年ぶり3作目のアルバム。

 

1stアルバムD.A.N.が、デビュー作とは思えない独自の音楽性で注目を集め知名度も一気に上昇した大名作なのですが、それ以降の活動は比較的マイペースな彼ら。

今作もインディーズレーベルからのリリースという事もあり、1stの頃に比べると注目度は薄まってしまった印象。

ただ、それでは余りにも勿体ないと声を大にして言いたいくらい、めちゃくちゃ良いアルバムでした。今作はヤバいです。

 

彼らのサウンドに通底している”ダンス”と”浮遊感”という要素はしっかりと残しつつ、よりディープで緻密な音作りと鬱屈とした現代社会を反映した歌詞が乗っかって何重にもアップグレードした楽曲群に仕上がっています。

どちらかというと暗いアルバムではあると思うけれど、それを”ダンス”の要素が上手くカバーしていて、本能的に興奮できるビート感と理性的な面を兼ね備えています。

正直個人的には、1stの頃から楽曲がどうしても似通ってしまいがちなバンドだなと思っていた部分もあったんですが、今作は全曲通してしっかり個性が粒立っていて完璧だと思いました。同じように感じていた方が居たら、是非聴いてほしいなぁ。

 

更に録音は早乙女正雄氏、ミックスは髙山徹氏という国内屈指のエンジニアが手掛けており、音がめちゃくちゃ良いです。インディーズでここまで良い音で作れるなら、そりゃメジャー行く気もないだろうよ。

 

1stから離れていた方、是非今のD.A.N.を聴いてみてほしい。

 

 

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Analogfish / SNS

 

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1999年に結成されたもはやベテランバンドの仲間入りを果たしたとも言えるAnalogfish (アナログフィッシュ)。

2005年リリースの「スピード」はアニメNARUTOのエンディングテーマに起用されるなど、メジャーシーンでの活躍を経て現在はインディーズレーベルfelicityに所属している彼ら。

今作は通算11枚目のフルアルバムという精力的なリリースを続けています。

 

筆者の同世代であれば「スピード」だけ知っているという方も多いと思いますが、近年の彼らに当時の面影は全くありません。こいつらはもう「アナログフィッシュ」ではなく、"Analogfish”なのです。

 

まあインディーズに戻ってからの活動も長いバンドではあるので、今作が特段大きな変化を遂げたきっかけという訳ではないのですが、なんせ良いアルバム。とても良いアルバムでした。

楽曲は佐々木健太郎(Ba./Vo.)と下岡晃(Gt./Vo.)の両名がそれぞれリードボーカルと作詞作曲を担当するスタイルをとっており、通例では作曲者がメインボーカルを務める事が多いようです。

 

今作はダンスミュージックをテーマとしている事を公言しており、全体を通して煌びやかでビート感強めの作風となっています。

結成以来初めての試みだという、下岡さんが作曲をし佐々木さんがメインボーカルを務めるM-3「Is It Too Late?」は今作の肝と言える楽曲なのですが、正直キャリア史上最高傑作レベルの楽曲だと思いました。

 

音数、構成ともに最小限を更に削ったレベルのミニマルな作りで歌詞の響きを最大限まで前面に引き出したアレンジが完璧に功を奏していて、サウンドだけでなく歌詞もしっかり伝わるアレンジに仕上がっています。

 

前作「Still Life」よりもポップでメロディが立っている作風で、前作の方が好きな方もいると思いますが、個人的な好みは今作の方が好きでした。

ベテランの貫録を感じた1枚でした。必聴だってばよ。

 

 

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The War On Drugs / I Don't Live Here Anymore

 

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ここから洋楽。

 

アメリカのロックバンドThe War On Drugsの通算5枚目となるアルバム。前作「A Deeper Understanding」が、第60回グラミー賞の最優秀ロックアルバム賞を受賞するなど、作品をリリースするごとに確固たる地位を築き上げている彼らの4年ぶりとなるアルバムは、まさに盤石と言える完成度でした。

 

このバンドの最大の持ち味である抒情的で切ないサウンドを活かし、少し内省的な方面へ舵を切った印象。やっぱり2020以降の音楽は世界中どこでもシリアスになりがちなよう。

M-1「Living Proof」から肌寒い空気感と抒情的な空気を纏った美しい幕開けで、とにかくサウンドスケープが美しい序盤の流れは完璧というほか無い。

中盤の核を担うタイトルトラック「I Don't Live Here Anymore」は、アメリカのインディーロックバンドLuciusをゲストに迎えより壮大な仕上がりに。

 

The War On Drugsといえば曲が割と長尺なイメージがあったのですが、今作は全曲スタンダードな長さに収められていて聴きやすくなった印象もあったので、入門作としてもオススメできる一枚だと思いました。

 

 

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Parcels / Day/Night

 

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Parcelsは、2014年に結成されたオーストラリア出身の5人組バンド。

 

2017年に発表されたデビューシングル「Overnight」で、他アーティストのサウンドプロデュースをするのは初めてというDaft Punkがプロデュースした事でも話題になりました。

 

今作は通算2枚目のフルアルバムという事で、筆者は恥ずかしながら今作を聴くまでこのバンドを知りませんでした。もっと早く知っていたかった。

今作はミックスにArctic Monkeysなどを手掛けるJames Ford、アレンジにOwen Pallettを起用し、全19曲の2枚組という特大ボリュームのアルバムとなっています。

 

噂によると前作よりも音楽ファンが騒がなかったらしい今作。個人的にはもっと騒ぐべき大名盤だと思いました。

勿論1stも今回知ったタイミングで聴いたのですが、まずソングライティング力が格段にパワーアップしています。2枚組というと少々ハードルが高いと思いますが、中身はファンク、ディスコを軸とした良質なポップソングに溢れていて、更に楽曲が変わるごとに色んな音楽ジャンルを取り入れながら多彩に移り変わっていくので、全く飽きる事なく最後まで聴き終えることができます。

 

1枚目はDayをテーマに、2枚目はNightをテーマに纏められていて、コンセプトにも沿っていながら別々に聴いても楽しめる点も魅力的。洋楽の2枚組ってだいたいDisc.2がちょっと冗長に感じがちだけど、どちらも遜色ない出来栄え。

1枚目の核となる「Somethinggreater」、2枚目の核となる「Famous」はどちらも必聴です。ここ数年の邦楽シーンにも通ずる豊潤なコード感ポップセンスを兼ね備えている稀有なバンドだと思います。

 

まだまだ知らない人が多いバンドだと思いますが、是非聴いてみてほしい。

 

 

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Aimee Mann / Queens of the Summer Hotel

 

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最後は今年1マニアックな選出をしてみました。これ知ってる人いたら連絡ください。

 

Aimee Mann (エイミー・マン)は、アメリカ出身のシンガーソングライター。元'Til Tuesdayというバンドで活動していた彼女は、1990年頃からソロシンガーとして活動しています。なんと御年61歳。最年長。

バンドの頃から数えれば実に35年を超えるキャリアを持つ彼女ですが、こちらも恥ずかしながら最近まで知らず。落第よ、洋楽おじさんになることを恐れるな。

 

エイミーマンは以前、映画17歳のカルテの原作であるスザンナ・ケイセンの自伝Girl, Interrupted (思春期病棟の少女たち)』という舞台の音楽を担当する予定だったが、コロナの関係で舞台の計画が中断。そこでスザンナ・ケイセンの自伝にインスパイアされた15曲を収録したという今作。

彼女は今作のように、特定の映画や舞台作品からインスパイアされたアルバムを多く作っていて、ある種サントラ的な聴き方もできるのが特徴。

 

最初に聴いた時はそのエピソードを知らずに聴いたのですが、単純にアルバムとしての完成度が高すぎてビックリしました。後からエピソードを聴いてもう一度聴き直すと、腑に落ちると同時に違った良さを発掘できる感覚がありました。

 

長年のキャリアで培われた抜群のソングライティング力と、ポール・ブライアンという方によるオーケストレーションのアレンジ力が、荘厳で迫力のあるサウンドを作り上げていて、全編通して統一感もありながらそれぞれに個性的なアプローチをしていて、何というか本場の強さみたいなものをまざまざと見せつけられたような作品でした。

 

名盤と言われる作品によく起こりがちな「あ、これ絶対自分が名盤作ってるって気付いたな」っていうポイントがあって、今作にもそのオーラを感じて楽しくなりました。もう途中から自分でもこれ名盤だなって気付いて曲作りが超楽しくなってるんだろうなっていうあの感じ。僕も一度は味わってみたいものです。

 

鬱屈とした現代社会にひっそりと生まれた至高の名盤、ご賞味あれ。

 

 

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いかがでしたでしょうか。今年もあっという間に終わってしまいましたが、たくさん良い音楽を発見できて嬉しい限りです。文明に感謝感謝~

 

6月末に上げた上半期編と合わせて、2021年のベストアルバムたちをどうか一つだけでも興味を持ってもらえるとありがたい限りです。

あとアルバム編だけでなく、単曲で紹介したい楽曲も沢山あるので、Twitterなんかでそのうち紹介できればと思います。

 

それでは、今年もありがとうございました。来年もよろしくお願い致します。ばいころまる~