諂諛

音楽好きによる音楽好きの為の雑記。

とにかく捨て曲の無い名盤が聴きたい!!!!【プレイリストあり】

 

捨て曲の無い名盤が聴きたい!!!!

 

皆さんもそう思った夜を一度や二度経験したことがあるでしょう。

 

 

音楽好きがこぞって絶賛する名盤に興味を持って聴いてみたはいいが、理解しようとしてもよく分からない…

大好きなアーティストの新譜を楽しみに聴いたが、期待外れだった…

 

そんなあなたも、もう悩む必要なんてありません。

アルバム全体の流れが~とか、芸術的観点が~とか、今夜はそんな事気にせず、ただ良い曲だけを集めた”捨て曲”がない名盤を紹介したいと思います。

 

ただ一人でも、悩める音楽好きの救いになりますように。アーメン。

 

 

1. スピッツ / さざなみCD (2007)

 

まずご紹介するのは、日本が誇る天才名曲製造機・スピッツの通算12作目のアルバム。

結成から20年という節目の年にリリースされた本作は、「魔法のコトバ」「ルキンフォー」等のヒット曲も収録された充実の内容。

 

ポップス性の強いスピッツの作品において”捨て曲が無い”事は結構重要なパラメーターになっていると思うのですが、このアルバムは正に捨て曲無しの大名盤。もはや狂気。

最大のヒット作となった6作目「ハチミツ」(1995)も、全曲バラエティ豊かな粒揃いの名盤ですが、今作は更に”メロディ”にフォーカスを絞った印象。奇を衒ったアプローチや変化球を極限まで削り、余すことなく極上の”美メロ”を1時間弱ぶん投げてきます。

 

アルバム曲の中で個人的に一押しなのがM-2「桃」。あまり言って来なかったけれどこの曲は私の人生の中でもトップクラスに衝撃を受けた曲の一つで、イントロのリフから歌メロ、裏で鳴っている楽器までもがキャッチーでみずみずしいミドルナンバー。

Aメロからサビまでの助走が少なめで、胸焼けしがちなザ・J-POP展開にも偏らない絶妙な構成。この引き算がソングライター・草野マサムネの大きな魅力の一つかもしれない。

 

ちなみにスピッツはこのアルバムから3年後、”とげまる”というベストみたいなアルバムをもう1枚リリースしています。マジで頭おかしいです。

 

 

Sazanami Cd

Sazanami Cd

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2. キリンジ / 3 (2000)

 

兄弟ユニットとしてデビューし現在は兄・堀込高樹のソロユニットとして活動中のキリンジ

本作は彼らの代表曲"エイリアンズ"を含むキャリア3枚目のアルバム。

 

2000年以降の邦楽の名盤として挙げられることも多い作品なのでジャケを見たことがある方も多いのでは。

ここ数年で何故かエイリアンズが色々なメディアで名曲として取り上げられたりした事もあって、何となく「エイリアンズが入ってるアルバム」みたいな認識になってきている気もするので今回紹介させていただきました。

 

いわゆる”兄弟キリンジ”時代の方向付けとなった作品で、シティポップやAOR、ジャズ等の影響下にある上質なポップスという位置付けを確立した金字塔的な作品。

全13曲トータル1時間10分という大ボリュームの内容で、先述のスピッツ"さざなみCD"が肩の力を入れず爽快な気持ちで聴けるアルバムなのに対して、こちらはじっくりと腰を据えて鑑賞したいアルバム。

 

代表曲の「エイリアンズ」はもちろん、シングルカットされた「アルカディア」「君の胸に抱かれたい」に加え、スリリングな「車と女」、後半ブロックで一際軽やかなポップソング「あの世で罰を受けるほど」等、もはや胃もたれ覚悟の名曲ラッシュが続く。

大ラスを飾るバラード「千年紀末に降る雪は」を聴き終えた後の余韻は正に映画さながら。ちょっとだけ老けます。

 

流石に20年以上経った今も語り継がれるだけあって、どこを切り取っても旨味のある大傑作です。

 

3

3

  • KIRINJI
  • J-Pop
  • ¥2139

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3. 川本真琴 / 川本真琴 (1997)


1996年に彗星の如く現れたシンガーソングライター・川本真琴のメジャー1stアルバム。

TVアニメ「るろうに剣心」のオープニング曲「1/2」がスマッシュヒット、その後リリースされた本作はミリオンヒットを記録している。

 

同時期にデビューしミリオンヒットとなった椎名林檎の「無罪モラトリアム」は今でも知らない人はいないぐらい聴かれている名盤ですが、当時は負けないぐらいの知名度とカリスマ性を誇っていた川本真琴。最近サブスク解禁された事もあり紹介しました。

 

川本真琴の特徴といえば、終始16分で刻み続けるアコギのカッティングと矢継ぎ早に繰り出されるシニカルな歌詞。本作はその革新的なサウンドが遺憾なく発揮されており、彼女の才能にただただ圧倒される仕上がりとなっている。

本作で度々登場するこのバキバキのカッティングギター、実はメジャーデビューが決まった段階でギターを弾いたことが無く、ほぼレーベルの意向で練習して弾けるようになったらしい。ほな天才やないかい。

 

しかし、そんなメジャー特有の制約や無理なディレクションに疲弊してしまった彼女は、その後アルバムを1枚だけリリースしたのち約10年活動休止状態になる。

現在はインディーズレーベルを自ら立ち上げマイペースな活動を行っているが、やっぱりこのメジャー1stが一番ギラついていて完成度も高く、一瞬の輝きと言ってしまえるかもしれないがそれだけ伝説的な名盤だと思います。

 

系譜としてはandymoriの「ファンファーレと熱狂」辺りの作品と通ずる部分もある気がするので、邦楽ロック耳の方にもお勧めしたい作品です。言わずもがな全曲良し。

 

 

川本真琴

川本真琴

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4. the chef cooks me / 回転体 (2013)


有名な作品が続いたのでマニアックな作品をご紹介。

 

2003年結成。インディーでの活動後2008年に一瞬だけメジャーデビュー。

紆余曲折を経て2013年、アジカン後藤主宰のレーベル「only In dreams」よりリリースされた本作は、サウンドプロデュースにもゴッチが全面的に介入し様々な外部アーティストを迎え製作された。

 

ジャケだけ見ると清閑な作風かと思いきや、中身は意外と賑やかで多幸感に溢れた楽曲が多く、とっつき辛さは皆無。

星野源トクマルシューゴが好きな人には間違いなくぶっ刺さる、ポジティブなエネルギーとアコースティック主体の上質なサウンドが両立したグッドミュージックが詰まっている。

 

プログレ的展開で徐々に熱を上げていき後半の爆発が気持ち良すぎるM-1「流転する世界」に始まり、大瀧詠一の名曲をオマージュした心躍る「ケセラセラ」、ホーンとコーラスが華やかなリード曲「適当な闇」と、序盤からクライマックス級の良曲が並ぶ。

後半は失速するかと思いきや、M-7「ゴールデンターゲット」以降さらに加速し「Song of Sick」で再び爆発する流れは圧巻。正味アジカン越えとるがな。

 

本作のリリース後バンドメンバーの離脱があり、現在はフロントマンである下村亮介のソロプロジェクトとなっている。

最新作「Feeling」は打ち込み主体の全く毛色の異なる作品なので、どちらを好むかは人によると思いますが、個人的には「回転体」をお勧めします。

 

 

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5. Weezer / Weezer (1994)


ここから洋楽。


まずはアメリカが誇るパワーポップバンド、みんな大好きWeezerの1stアルバム。

「捨て曲がない 名盤」でGoogle検索するとこのアルバムがヒットするぐらい散々擦られてきた通称"Blue Album"。

 

ヒットシングル"Buddy Holly"、"Say It Ain't So"を含む全10曲の簡潔な内容、これぞウィーザー!な王道の泣きメロと余計なテクニックを排したシンプルな演奏だけで最後まで駆け抜けていく。

1990年代の初頭にNIRVANAが席巻して以降ヘビーでシリアスなロックが主流となったが、このアルバムはそこを敢えて逆手に取り人気を獲得した。実はかなり策士な人たちなんです。

 

かなり多作なウィーザーの膨大なディスコグラフィーをすべて追うのは結構大変なので、まずはこのアルバムとGreen Albumを聴けば間違いは無いでしょう。

 

Weezer

Weezer

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6. Two Door Cinema Club / Tourist History (2010)

 

2007年北アイルランドで結成されたインディーロックの雄、Two Door Cinema Clubの1stアルバム。

 

2000年代中盤辺りからアークティックモンキーズを中心に盛り上がりを見せたUKロックの流れを引き継ぎながら、よりポップで軽快なダンスロックに特化したサウンドが特徴のTwo Door Cinema Club

日本のリスナーからも絶大な支持を得ており、後発のダンスロックバンドは漏れなく比較されるようになってしまった金字塔的な作品。

 

よっぽど感性が老けていない限り、洋楽の入り口として最適なアルバムだと思います。一部の過激派洋楽大好きおじさんが軟派だと非難する標的にも挙げられがちですが、普通にギターロックを楽しめる方なら間違いなくハマるはず。

バンドのアンセムとなったM-8「What You Know」を始め、時を経てTikTokでバズり倒した「Undercover Martyn」、エレクトロポップな感触が強めな「Eat That Up, It's Good for You」等、親しみやすくも没個性ではない革新的なダンスロックを堪能できます。

 

小難しい理屈は抜きにして只管享楽的なグッドミュージックを浴びるほど摂取したい、そんな今回の記事のテーマに打って付けな一枚。

これを聴いて取っ付き辛いと感じた方は潔く洋楽を諦めてください。一生KEYTALKの歌詞の意味とか考察しててください。

 

Tourist History

Tourist History

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7. Death Cab For Cutie / Kintsugi (2015)


1997年結成のオルタナティブバンド、Death Cab For Cutieの通算8枚目となるアルバム。

金継ぎ=割れた陶器などを修復する技法という意味の日本語がタイトルに冠されており、日本人でも馴染みのない単語のチョイスにインテリジェンスを感じる。

 

個人的に国外のバンドの中でも3本の指に入るほど好きなデスキャブなのですが、中でも1番好きなアルバムがこのKintsugi。

初期のポストロック路線からメジャー以降のキラキラしたエモ路線を経て、もう一度音楽的な変化を遂げた本作。少し内省的でシリアスなサウンドに豊潤なコード感でより深みのある音像になった印象。

後期GRAPEVINEにも通じる部分があって、バイン好きには間違いなく響くであろう1枚。

 

もはや捨て曲がないのは言わずもがなだが、M1「No Room In Flame」からM4「Little Wanderer」までの怒涛の名曲ラッシュはいかつい。デスキャブの持ち味である美メロを急極にまで研ぎ澄ました職人芸のような楽曲群が並んでおり、全体のバランスや流れも緻密に計算されていて聴きやすい。これが結成18年にして成し得るのだからそりゃあ好きになるっしょ。いかつい。

 

オルタナ、ポストロック好きに限らず未聴の音楽好きは全員聴くべし。名盤です。

 

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8. Toro y Moi / Outer Peace (2019)


最後にご紹介するのは、アメリカの歌手Toro y Moi(トロ・イ・モア)による7作目。

 

日本での知名度はあまり高くないが、音楽好きなら知ってて損のない確固たる評価を得ているおっさんです。

 

彼の音楽性は作品ごとに結構毛色が異なり、どの作品を好むかは人それぞれな気がするが"捨て曲なし"という軸に沿って選ぶならこのアルバムかと思われる。

初期のサイケポップ路線、4thアルバム辺りからのファンク路線に続き、一気にエレクトロ路線にシフトチェンジした本作。

ちょうど2019年辺りから日本でもこの手のエレクトロポップ系のアーティスト(SIRUP、TENDRE等)が台頭してきた事もあり、流行りに乗っかった印象も抱きかねないが、流石は10年選手のトロ・イ・モア。そこらの新人とは地盤がまるで違う。

 

本作で最もキャッチーなリード曲「Freelance」がアルバムの折返し地点に配置されており、トータル30分弱と収録時間も短めで、ダレる事なく最後まで聞き通せるのも魅力。変に逆張りせずリスナーの需要を分かっておられる。

「Ordinary Pleasure」や「Who am I」などのハッピーでダンサブルな楽曲はもちろん、「Law Of the Universe」「New House」など初期のサイケ路線とエレクトロが融合したハイブリッドな楽曲も巧みに織り交ぜ、セルアウトにならず耳の肥えた音楽オタクにも優しい楽曲構成となっている。

 

この記事が出る少し前、約3年ぶりにリリースされた新譜「MAHAL」は、初期のサイケロック路線を更に深く掘り下げた超ディープなサウンドに変化してます。

こんなにアルバム毎に作風が変わるのは清竜人かコイツぐらい。ンモォニンサアァォォンン

 

Outer Peace

Outer Peace

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まだまだ紹介したい作品が沢山ありますが、今回はここまで。

 

最後に、今回紹介した作品に加えて個人的に選んだ捨て曲なし名盤をプレイリストにまとめました。

捨て曲の良さが分からないあなたも、分かるあなたも、そこに差はありません。何卒ご自愛ください。

 

 

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