諂諛

音楽好きによる音楽好きの為の雑記。

しりとり名曲紹介 No.19 [空中レジスター / the pillows]

 

 

今日もYouTubeとテレビを同時に見ている皆さんこんばんは。

 

このブログの記事も結構溜まってきて、まとめ読みするにも楽しいぐらいにはなったでしょうか。

ところで、最初の頃は毎週水曜日更新を目指していましたが、諸事情により毎週金曜日更新がメインになっていくかと思います。これからも趣味を生きがいに下積みを頑張ります。夢見るおちょぼ口

 

 

 概要

 

・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。

・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。

・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。

(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。

 

 

空中レジスター / the pillows

空中レジスター 【the pillows】 - ニコニコ動画

 

時は平成元年であります1989年に結成、1991年にメジャーデビュー。今年結成30周年を迎えられた大ベテランロックバンド、フリクリおじさんことthe pillows。皆さんご存知でしょうか。

Mr.ChildrenLUNA SEAフラワーカンパニーズなど、四半世紀に渡って活躍するバンドが多数結成された89年組。ちなみに芸人だと雨上がり決死隊千原兄弟などが同期だそうですよ。

 

ピロウズといえば日本のバンドの中でもかなりの多作でありまして、これまでに22枚のオリジナルアルバムと38枚のシングルをリリース、バンドとしての総楽曲数は約330曲。すぎょい。

そのほとんど全楽曲の作詞作曲はボーカル山中さわおさんが担当しています。

さわおさんはピロウズ以外にもTHE PREDATORSという別バンドやソロ活動もしており、それらの楽曲を含めると実に400曲近い楽曲をリリースしています。恐ろしや。

 

そして、そんな約330曲の楽曲をすべて持っているぐらい、筆者はthe pillowsが大好きです。サンキューバスターズ!

 

 

不変の普遍

 

空中レジスターは、2005年にリリースされたアルバム「MY FOOT」に収録された楽曲。ちなみにこのアルバムはピロウズの中でも1番好きなアルバムで、初めて聴くには最適な1枚だと思うので興味のある方は是非とも聴いてみてください。本当にFunny Bunnyだけじゃないんですピロウズは。

 

そして本題のこの曲なんですが、びっくりするぐらいシンプル。過去にこのブログで紹介した曲に多く見られた複雑な展開だったりコードワークだったり演奏技術だったりは、この曲にはほぼありません。

冒頭からいっせーので全員同時に楽器が鳴りだし、楽曲の構成もAメロ主導のシンプルな展開で、ビートルズとか昔の洋楽っぽい曲構成。

ピロウズの音楽的ルーツには、ピクシーズニルヴァーナなどのオルタナティブロックの影響が濃いこともあり、楽曲の構成や演奏はシンプルな楽曲が多いのも特徴の一つであります。

 

これだけシンプルに細かい要素を削って、メロディー、歌詞、リフだけの要素でどえらいカッコいい楽曲に仕上げる技を、ピロウズは実に30年以上ずっと変わらずやり続けているのです。

決めつけた言い方をするなら、素人には真似できない。後輩バンドがピロウズの音楽性をリスペクトしようとすると完全にピロウズになってしまう。僕はこれをバスター菌と呼んでいます。

 

年をとるにつれて、発泡酒が美味しくなったりコーヒーは基本ブラックになるけれど、結局コアラのマーチが一番美味い、それを忘れる事はないんです。僕にとってそれがピロウズなんです。

 

 

 

比喩の天才

 

ピロウズの歌詞は名作がとりわけ多いのですが、この曲の歌詞はピロウズの中でもかなり完成度が高いと思います。2分半というコンパクトな時間の中に、ピロウズの世界観とニヒルな切り口が無駄なく詰め込まれていて、誰が読んでも一目で分かるインテリジェントな面と、歌として口ずさんでも心地良いリズム感がある作品です。

 

代表曲を知ってる方は分かると思いますが、山中さわおの書く歌詞の中には比喩表現寓話的表現が多く見られます。王様とか神様とか、空想めいたワードが頻出単語なので皆さん覚えておきましょう。

この曲の歌詞の冒頭からもいきなり「鳥になって」という上級者レベルのファンシーな比喩が飛び出すわけですが、もう最後までずっとファンシーな世界観、かと思いきや

「汚れた空気も吸うしかなかった」

という1フレーズで、グッと現実に引き戻される感じがしますよね。僕はここの歌詞を聴いてめちゃくちゃ感動したのを覚えています。

 

山中さわおさんの作る曲は基本的に誰かへ向けたメッセージソングではなく、さわおさん自身の視点で見た世界や体験を、主観的な視点で書いた歌が多いんですね。

空中レジスターのようなハチャメチャな肯定ソングも、初期の名曲ストレンジカメレオンのような狂気じみた内向ソングも、誰に向けるでもないさわおさん自身の物語をフィクションめかせて歌っていることで、一見ポップな語感に聴こえるけれど中身は生々しいさわおメソッドの完成という訳です。

 

これだけセオリーに基づいていながら、曲として聴くと本当にシンプルにメロディーの邪魔をせず歌詞として成立しているのがすごいところ。言葉選びが本当に的確で丁寧なんですよね。

ちなみに歌詞がうまくハマらない時は「アウイェー」を連呼するさわおメソッドもありますので興味のある方は深く掘り下げてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

***

 

 

今回はここまで。次回は「た」から始まる名曲を紹介します。サンキューバスターズ!

 

 

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しりとり名曲紹介 No.18 [ジムノペディック / 藍坊主]

 

今年も暑い季節がやってきましたが、梅雨明けまでは部屋のクーラーを絶対に付けないという重いカルマを背負っている皆様の悲鳴が私には聞こえます。

 

そんなガラス玉粉々にぶち砕いて、休日の昼間ぐらいは涼しい部屋でSyrup16gでも聴きましょう。神のカルマだけに。

 

 

 

概要

 

・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。

・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。

・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。

(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。

 

 

ジムノペディック / 藍坊主

 


1999年結成、2004年にトイズファクトリーからメジャーデビューした4人組ロックバンド。

バンド名は、高校生の時に組んだザ・ブルーハーツコピーバンド「ザ・ブルーボーズ」のブルーを"藍"に、ボーズを"坊主"に変えたものが由来となっています。

 

この楽曲は、2006年にリリースされたアルバム「ハナミドリ」に収録された楽曲。藍坊主の中でも屈指の名曲とファンの間で評価されることの多い、とても人気の高い曲の一つ。

かくいう筆者も藍坊主のファンで、シングルも全部持っているほど大好きなのですが、ジムノペディックは藍坊主の中でも3本の指に入る傑作だと思います。

 

 ただ、藍坊主の歴史というかサウンドの変化について、初見の方には説明しないとややこしい大きな変化があるので簡単に説明します。

 

 

 

深化する哲学世界

 

 

初期の藍坊主は一言でいうと、青春パンクを軸にしたストレートで男臭いロックをやっていました。この頃から作詞作曲を担当するのはhozzyこと佐々木健太(Vo.)と、藤森真一(Ba.)の二人が主ですが、二人の曲にはっきりした違いはありませんでした。

 

 

そこからメジャー2ndアルバム「ソーダ」をリリースするのですが、このアルバムの収録曲の一部から、hozzyこと佐々木健太(Vo.)の歌詞が難解で哲学的な内容に変化します。

アルバム中の「水に似た感情」という楽曲は、サウンドからも青春パンク期の面影がまったくないほど実験的で不思議な曲になっています。良曲。

 

そこからメジャー3rdアルバム「ハナミドリ」、4th「フォレストーン」、5th「ミズカネ」と、hozzyの哲学世界はどんどん深みを増していき、藤森真一は対照的にストレートで分かりやすい歌詞とサウンドを極めていきます。

hozzy氏はこの辺りから"エスペラント語"という言語を使用した曲名や歌詞を多用するようになり、完全に「何言ってんだこいつ」状態の曲もたまーにあります。

気になる人は"シータムン"で検索してみよう。

 

というように、中期から後期にかけて藍坊主というバンドの中で音楽の方向性が二極化するという珍しい現象が起きたのです。

ここが藍坊主の難解な部分であり、ものすごい大きな魅力だと思います。もちろん色んな意見があるだろうけど、一つのバンドでこなす音楽の幅が広いのは単純に実力とチームワークが優れているからできることですよね。

 

 

さて、ここからはようやくジムノペディックの本髄をしゃぶり尽くしていきたいと思います。

 

 

 

無機質な叫び

 

 

この曲のタイトル「ジムノペディック」という言葉はhozzyによる造語で、作曲家のエリック・サティの楽曲「ジムノペディ」が元となっています。この曲の歌詞にも"サティのピアノ曲"というフレーズが出てきますね。

 

このサティという作曲家の楽曲は、印象主義という現代音楽におけるジャンルみたいなものに属していて、印象主義っつうのは簡単に言うと静止画や風景画をイメージした音楽性で、無機質でリズムのない音楽みたいなことです。分かんない人はジムノペディを聴いてくれ。おしゃれなYouTuberとかがよく使ってるアレです。

 

要するに、このジムノペディックという楽曲が前提として、サティの楽曲のような無機質で静的な世界観を表現しているんですね。この時点で青春パンクのパの字も無いほど実験的な音楽なんですよね。暗いよ。曲が。単純に。

 

そしてここでも健在hozzy氏の哲学世界。ベースは情景描写や抽象的なイメージもありながら、明らかに他者に何かを訴える熱みたいなものは感じられますよね。

 

別に世界は何の変哲もないいつもの世界なんだけど、それが何かの拍子で不満に感じたり怖くなったりするような、何も違和感がないという違和感みたいなものを訴えかけているような気がするんですよね。

 

1サビ2サビの最後、「もう一度君に会いに"行く"」のではなく、「会いに"くる"」という言葉で締めているのも、何か哲学的な意味を感じる締め方でグッと来るものがあります。実に奥深い。藍坊主。

 

かといって曲が難解な訳ではなく、メロディーや展開はポップスとして誰もが耳にスッと入るキャッチーさがあって、別にクラシックとか印象なんちゃらとか何も分からなくても、何となくで感じられる冷たさとか体温の無さみたいなものが音越しに伝わってくる感覚がありますね。

 

藍坊主の音楽的構造はシンプルに見えてめちゃくちゃ奥深くて、単純にピアノやシンセの音数や配置もめちゃくちゃ凝ってて、高校生の頃に中期の藍坊主のアルバムのバンドスコアを見たことがあるんですが、後にも先にもロックバンドのドラムのフレーズで5連符が出てきたのは藍坊主だけです。誰が再現できんねんと。

 

そんな音楽的造詣に長けたメンバーだからこそ、パンクからポップスからプログレまで幅広い音楽性を一つのバンドとしてまとめ上げることができていると思います。

現に最近のライブでも初期のパンクナンバーをよく披露するし、ファンもそういう曲が来たら一気にパンクのノリに変わってモッシュが起きたりします。そういう意味では一番すごいのはファン。

 

 

 

***

 

 

藍坊主というバンドを初めて知ってくれた方、初期から聴くか後期を聴くか、まずは好みだなと思った方から聴いてみてください。

初期は「鞄の中、心の中」、後期はアニメTIGER&BUNNYのエンディングにもなった「星のすみか」辺りが代表曲かと思います。

どちらも違った魅力があります。どう聴いても別バンドだけど。

 

 

 

今回はこの辺で。次回は「く」から始まる名曲を紹介します。

 

 

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しりとり名曲紹介 No.17 [shower beige / Spangle call Lilli line]

 

世はあけおめムードでございますが、ゴールデンウィークが早くも終わりを迎えようとしています。心の準備はできていますでしょうか。私はできていません。

 

令和元年、一発目のしりとり名曲紹介は、久々のマニアック選曲でございます。

GW明けのダウナーな気分を癒すような透明感のある楽曲をセレクトしました。

 

 

 

概要

 

・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。

・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。

・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。

(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。

 

 

 

shower beige / Spangle call Lilli line

 


 

1998年結成、2001年にアルバム「Spangle call Lilli line」をリリース以降、約20年間インディーズで作品をリリースしているバンド。

 

まずこんな読みづらくて長い横文字のバンド名を所見で見て記事に飛んでくださったあなた、素晴らしいセンスをしています。

わしらスパングルコールリリーラインっちゅうもんでして、名前だけでも覚えて帰ってくださいね言うてますけども。

 

スパングルの特徴と言えば、ボーカル大坪加奈さんの浮遊感漂う声と、抽象的な単語が連なったような歌詞、ピアノとシンセが絡んだポストロック寄りのサウンドなどが挙げられるように、いわゆる普通のロックバンドとは異なる音楽性のグループと言えます。

 

この曲は2010年にリリースされたアルバム「VIEW」からの1曲。このアルバムはポップをテーマに製作されたアルバムで、同時期にリリースされた「Forest At The Head Of A River」というアルバムは、対照的に長尺でマイナーな曲が収録されています。

 

ここ最近このしりとり名曲紹介シリーズでは「ここがこうなっててすごいんだよ!」という風に、かなり事細かに理論立てて曲の解説をしていたんですが、この曲に関してはあんまりそういうのをしたくないというか、するべきでない曲だと思うんです。

この抽象的で説明のつかない感じがスパングルの良さなので、とにかく聴いて気持ち良いという事だけ理解してくれればそれで正解だと思います。

まぁ歌詞に関しては例によってまったく文脈のない単語を並べた感じなので、興味のある方は調べてみてください。

 

とはいえ、何かしら文字にして良さを伝えないとブログとして意味がないので、もうちょっとだけ彼らの良さを掘り下げていきたいと思います。

 

 

 

音楽は趣味

 

彼らの大きな特徴がもう一つあって、メンバー全員がデザイナーやカメラマンなど音楽とは別の本業を持ちながら活動しています。

本業の方で経済的に自立していて、音楽活動を趣味と自ら公言するほど自由度の高い活動を続けています。

 

メジャーレーベルに所属すれば、もちろんテレビやインターネット等様々な面で力を入れて自分たちを宣伝してくれる、いわば楽して有名になれる環境になります。もちろん実力は不可欠だけど。

ただその分、会社に貢献するために売り上げを気にしながら定期的にリリースや宣伝活動を休みなくしなければならないし、そもそも会社と契約した時点でメジャーデビュー=就職であるので他の仕事で生計を同時に立てるのは不可能なんですね。

 

 

彼らはそんな「売れれば大金持ち、売れなければ終わり」みたいなギャンブリング精神とか根性論みたいなやり方でなく、より地に足着いた自由なやり方で音楽を作っています。

スパングルはライブ活動が他のバンドに比べてかなり少なく、2010年にはライブ活動の休止も発表されました。2015年以降は年に数回ペースでしかライブを行っておらず、製作メインでの活動を続けています。

音楽一本で生計を立てるとすれば、音源の収益だけでは難しく、年1回はツアーを回ってグッズやCDを売って生計を立てなければいけないのが現実。バンドって普通の人が思っている以上にしんどいんですね。

 

もちろんスパングルのメンバーが楽をしているとかいう話ではなくて、本業はCDジャケットなどのデザイナーとして活動しているギターの藤枝憲さんは、インタビューで「僕の場合、音楽はガス抜きですね。12時間仕事でモニターを観てるんで。」と答えています。要するに音楽を仕事として成立させることの苦しみや大変さを分かっているがゆえに、あえて音楽とビジネスを切り離してよりダイレクトに音楽を楽しみたいという意志で活動していると言えますね。

 

僕は彼らのスタンスを大変リスペクトしていますし、そこら辺の売れることばっか考えて流行ってるバンドの美味しいところだけ雑に切り取ったようなジャンキーな音楽やってるバンドよりよっぽど売れてほしいと思っています。言うてますけども。

 

 

 

***

 

 

今回はちょっといつもより短めになりましたが、とにかく説明するのが野暮なバンドなので、聴いてくれ!という記事でした。

スパングルの曲はどれもゆったりとしていて、窮屈で忙しない日常社会を忘れられるようなトリップ感を味わえるので、最近の音圧ギッチギチなポップ音楽に耳が疲れている方も是非聴いてみてください。

 

 

次回は「じ」から始まる名曲を紹介します。お楽しみに!

 

 

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【CCCD、PLAYBUTTON、、】平成に置いていきたいJ-POP業界の黒歴史 【覚えてる?】

皆様ごきげんよう、落第です。

 

さて、元号が変わるというのに家で連休を持て余している皆様方に、わたくしはそんなあなた方の為にブログを書かせて頂きました。

 

本日2019年4月30日は、第125代天皇である今上天皇が退位される日でございます。

つまり翌日5月1日より第一皇子にあたる皇太子徳仁親王が第126代天皇として即位され、元号が令和へと変更される歴史的な日であります。えぇ。

 

 

そんな平成最後の記事という事で、ちょっと平成を振り返るような記事にしたかったのですが、いつものように曲を褒めるだけの「平成の名曲トップ20~!!」みたいなのはDAMチャンネルでやってくれればいい話なので、今回はいつもと違った視点で、平成を振り返ってみようと思います。

 

 

 

平成に置いていきたいJ-POP業界の黒歴史

 

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先に言っておくと、今回の観点は音楽そのものの変化とか黒歴史の話ではなく、ざっくり言えばCDとかMDとかストリーミングサービスとか、音楽を聴く手段として色々開発されてきた物の黒歴史の話です。

 

まあ音楽そのものの話が聞きたかったという人もいるかもしれませんが、多分邦楽で一番の黒歴史はヘキサゴン関連のやつだと思います。

 

音楽を聴くツール、規格は平成に入ってからの30年間で一気に変化しました。

80年代前半にレコードからCDへ普及し、CDセールスの全盛期が20年ほど続きます。それから徐々に衰退し、ここ数年でインターネット上での音楽配信サービスの普及が進んでいきました。

 

その間に音楽業界というのは色んな試行錯誤をした訳です。そこには勿論失敗に終わった物や、今や生産されなくなった物が沢山あります。

今日はそんな音楽業界が忘れ去りたい黒歴史を一気に掘り起こして、新しい時代に同じ失敗を持ち越さないように、綺麗さっぱり水に流してしまおうという有難い記事なのです。

 

まずは代表的な黒歴史から紹介したいと思います。

 

 

File No.1 『CCCD

 

 

コピーコントロールCDといいます。日本の音楽業界がやらかした代表例ですね。

YouTubeで「CCCD」で検索すると一番上の候補に「CCCD 黒歴史」と出てくるほどこの大馬鹿者に対する世間の風当たりは強く、これを知っている人にCCCDという言葉を投げかけたが最後、右手の音叉で殴られてあなたは死にました。

 

 

どういう物なのか簡単に言うと、パソコンに音楽をデータとして取り込めないように加工してあるCDの事で、不正にデータを共有する行為への対策として生まれたものでした。

2002年頃、パソコンとインターネットが大幅に普及して、音楽の違法アップロードが問題視され始めた時に、avexを始めとする大手レコード会社の人たちは「そもそもパソコンにデータが取り込めるからいけないんだ!どうにかして曲自体を取り込めないようにするのじゃ!」と意気込んだ結果完成したのがコレ。

 

何がヤバいって、取り込めないようにする為の仕組みが狂ってて、CDの中のデータに意図的にエラーを仕込ませる事によってCDがパソコンに誤作動を起こさせてコピーができなくなるという不良品まがいのシステム。

更にそのエラーを仕込ませた事によって、音質に分かりやすい劣化が生じたり、しまいには普通のCDプレイヤーでも再生できないこともあったそう。完全に不良品です。本当にありがとうございました。

 

2002年から2004年頃まで、avexやEMIなど大手レコード会社からリリースされたシングルやアルバムには、かなりの数がこのCCCD規格でリリースされましたが、上記の理由から消費者だけでなくアーティスト側からも反感を買い、更にはiPodの爆発的ヒットによりCDの合法的なコピー需要が高まり、CCCDは2006年頃から姿を消したのでありました。

 

くるり岸田繁さんがツイッターで当時のCCCDへの不満についてかなり赤裸々に語っていたツイートがありましたが、やはり当時からこれをポジティブに捉えていたのはレコード会社側の人間だけだったと言えると思います。

いかに当時のCD業界が絶対王政だったかという事も。。

 

 

 

File No.2 『CD-EXTRA

 

この時代の失敗した規格にありがちな、名前だけカッコいいパターンの典型例、その名もCDエクストラ。チャキーン。

 

仕組みとしてはCDの中に音楽データだけでなく、パソコンで再生できる映像データや画像データが入っているというもので、当時DVD付き初回限定版みたいなのはそこそこあったものの、DVD自体の原価がちょっと高い時代でした。

そこで生み出されたこの大発明。一体なぜ失敗に終わったのか。

 

理由は大きく2つあって、1つは動作が不安定だったこと。実はこのCDエクストラ仕様のシングルCDを何枚か持ってて、パソコンで再生しようとしたんですけど、見れるものと見れないものがあったりしました。

 

そしてもう1つは、ご存知YouTubeの登場。

こればっかりは音楽業界は悪くないと思う。こんな便利な物生まれると思わないですよね。

 

CDエクストラが最盛期だったのが2005年辺りで、その年にYouTubeのサービスが誕生してるんですね。

当時はまだ公式チャンネルなんて一つも無い時代なので、PVとかは全部違法アップロードだったのですが、あまりに手軽に投稿できるしあまりに手軽に視聴もできるという事で、2010年ごろから音楽業界もYouTube市場に乗り換えていきました。

 

 

一時期は時代を作りかけていたCDエクストラも、デジタルの流れには逆らえませんでした。

 

あと、普通に超画質悪かったしあんまり良いとこ無かったです。

 

 

 

 

File No.3 『NETJUKE』

 

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これ、持っている方いるんでしょうか。僕は是非とも見てみたいんです。

 

先程までのCDそのものの規格ではなく、2006年頃登場したSONY製のオーディオ機器その名もNETJUKE。

その機能はと言うと、CDプレイヤーとMDプレイヤーの他にHDDドライブが内蔵されており、CDを録音し保存ができるという、いわばジュークボックスのような機能が一つ。

更にインターネット環境があれば、中央にある小さいモニターで音楽をダウンロードできる(いわゆる着うたフルがダウンロード可能)という夢のような1台。

 

更に更に、後発の進化版ではFM/AMラジオが受信でき、そのラジオの「音声部分」と「トーク部分」を自動判別して録音できる機能もついていたそう。ガチですごい。

 

このように、とにかくあらゆる用途で色んな音楽を取り込んで、それをすべて1つのストレージにまとめて、どれも好きな時に再生できるように作られた音楽マニア向けのオーディオプレイヤーだった訳です。

 

 

これに関しては黒歴史というほど駄目じゃないし、当時小学生の僕がもしこれを知っていたらめちゃめちゃ欲しかったと思います。

 

こんなハイテクな代物が売れなかった理由は、やはりパソコンの手軽さには敵わなかったという点に尽きると思います。

NETJUKEでは再生可能なMDも、パソコンで再生できないという理由で需要がめっきり減ってしまい、パソコンですべて事足りてしまうようになったんですね。

登場が2006年と新しいからか、今現在このNETJUKE自体にプレミアがついている訳ではありませんが、10年後ぐらいにはマニアからの需要が高まって、超高値で売れるかもしれませんね。

 

あと当時NETJUKEのCMが放送されていて、それがとてもハイセンスで好きでした。若かりし頃の女優の波瑠さんが出演しています。

 

 

 

File No.4 『PLAYBUTTON』

 

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今回の記事の個人的な大本命と言ってもいいでしょう。ご存知ですか、PLAYBUTTON。

最初のCCCDのように反感を買うものではないですが、黒歴史という本来の語意にはある意味1番沿っているアイテムではないでしょうか。

 

2011年頃に開発され、CDに代わる新たな音楽再生メディアとして試験的に導入していたデジタルオーディオプレイヤー、それがPLAYBUTTONなのです。

有名どころだと、安室奈美恵の2012年のアルバム「uncontrolled」がCDと同時にPLAYBUTTON版をリリースし、話題を集めませんでした。

 

その仕組みは至って簡単。缶バッジのような形、大きさの商品にイヤホンジャックが付いていて、そこにイヤホンを挿すと自動的にアルバムが再生されるという物。

容量の限界は256MBと、FLACファイルでフルアルバムがギリギリ入るぐらいなので、別にCDよりいっぱい曲が入るとかいう訳でもないそうです。失笑。

 

中身のストレージは一切消したり追加したりできないという点ではCDと変わらないですが、一応カバンに付けて持ち運んだりできるのでそれなりに便利な品ではあると思うんです。思うんですが、、

 

 

確実にスマホで聴ける方が便利なんですよね。

 

 

冷静に考えたら誰でも分かりそうな事なんですが、大手レコード会社が多数決で流行る方にベットした結果販売にまで踏み切っている訳ですから、ビジネスとは難しいですね。

 

だいたいそれなりに音楽が好きな人ならアルバムだけでも100枚以上は取り込んでいるのが普通であって、1枚1枚カバンに貼り付けてたら物凄いハッピーな人だと思われるに違いないよ。

 

せめて容量をもっと増やして、アルバム2枚分の曲数が入ってるとか、ワンマンライブの音源がフル尺で入ってるとか、そういうCDと差別化した商品があれば手に取る人も増えるかもしれなかったのですが、

なんかもう「CDの時代は終わった」と言わんばかりの皮算用で踏み切ってしまったのが、PLAYBUTTON最大の敗因と言えるでしょう。

 

 

そして何より、僕の敬愛するロックバンドGRAPEVINEが2012年に出したベストアルバムの初回限定盤に付いていたカップリング集「OUTCAST 2.0」が、このPLAYBUTTON形態のみでの収録だったことが、僕をここまで怒らせた理由でもありますよ。

 

 

逃がさないっすよ?先輩。

 

 

***

 

 

 

ここまで駆け足で紹介させて頂きましたが、共通して言えることは、音楽業界はいつの時代もCDを売る事を念頭に試行錯誤を繰り返しているということです。

 

今の時代CDが無くても、CDがあった時代以上の自由度と楽しさを提供できるように進化しています。

定額ストリーミング配信の普及が進んだここ数年では、もはや配信で音楽を買う必要すら無くなるかもしれないほど、CDの需要は遠ざかっていく一方です。

 

 

ただ、音楽業界は、ただただ、もう、ただひたすら、あの時の栄光を忘れられないんです。

 

 

3つ刺さった串だんごが上から長男次男三男であることを説明しただけの歌が350万枚も売れたあの栄光を忘れる事ができますか。

日本の全世帯のうち10世帯に1枚このCDを持っていた計算になります。

 

日本一売れた宇多田ヒカルのアルバム「First Love」に至っては765万枚。5世帯に1枚ですね。アパートの全部の階のどれか1部屋は持ってたんでしょうかね。

 

昨今CDが売れない、音楽不況だと騒がれていますが、当時のCDバブルを体感していない自分からすれば、よっぽど今の方が正常だと思っちゃうんです。ゲームソフトみたいにダイレクトに刺激を体感できる娯楽でもないし。

 

 

確かにCDを売る事は売り手にとってもアーティストにとっても大事だし、僕もCD大好き人間なのでCDが綺麗さっぱり無くなってしまうのは絶対に嫌なのですが、

単純にその考えが強すぎた結果、このような失敗を産み出してしまったのです。

極端な話、今でも飛び抜けた名曲がリリースされれば100万枚売れると思っているのです。

 

じゃあ何故近年のCD需要が下がっているかというと、やはり消費者が手軽に音楽を聴く方に圧倒的に需要があるからなんですよね。

YouTubeあれば有名な曲は聴けるし、すぐ消されたりするけどアルバムの曲も聴けたりするじゃん、という圧倒的情報弱者の増加により、シングル曲とアルバムのリード曲以外の曲が聴かれないという状況が生まれつつあります。

これに関しては消費者側の問題なので、そこへの対策は必要だと思っています。

 

CDは単純なコレクションアイテムとしてだけでなく、YouTubeでは聴けないシングルのカップリングに隠れた名曲があったり、歌詞カードが凝っていたり、初回盤のDVDが貴重な映像だったり、CDを買わないと味わえないアーティストの魅力みたいなものも沢山あるので、そこをもっと情報弱者たちに伝えられれば業界も潤うのではないでしょうか。

 

もう不正コピー防止の為だけに音質を犠牲にするような暴挙に出ない事を祈っています。

そして新しい時代の新しい音楽が広がることを心から楽しみにしています。

 

 

良い事言った。

 

 

 

***

 

 

とても長い記事になってしまいましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。

令和元年もブログはバシバシ更新していきますので、今後ともよろしくお願いします。

 

 

 

しりとり名曲紹介 No.16 [交信 / 赤い公園]

 

やっほー!落第です。

前回に引き続きガールズバンドを紹介しますよ。

 

 

概要

 

・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。

・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。

・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。

(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。

 

 

交信 / 赤い公園

 

2010年結成、2012年にEMIよりメジャーデビューした4人組ガールズロックバンド。

結成当初の音楽性はハードロックやシューゲイザーなどの音楽性を取り込んだ複雑な楽曲で話題を呼んだが、メジャーデビュー以降はポップスにより近付いたサウンドに初期の歪さを融合させた新しいジャンルを築き上げた。

2017年、ボーカル佐藤千明が脱退を発表。2018年に、元アイドルネッサンス石野理子がボーカルを後任することが決まった。

 

この楽曲は、メジャー1stシングル「今更 / 交信 / さよならは言わない」、1stアルバム「公園デビュー」に収録されています。

 

 

説明するだけで肩がつりそうになるバンドですが、このバンド、音楽オタクなら知らない訳にはいかない魅力だらけのバンドですよね。

特に作曲をしている人間ならほとんどが知っていると思いますが、ギター兼作曲を務める津野米咲さんの才能はプロの作曲家の方たちからも一目おかれているのです。

 

赤い公園が広く知られるきっかけとなった「NOW ON AIR」以降のポップで明るいイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、あれは津野米咲ジキルの方です。

 

今回はハイド津野米咲を紹介しようと思いますので、知らない方はぜひ目を通してくださいね。

 

 

変態

 

いつの時代にもロックバンドをやる人間の中には、過激なパフォーマンスをしたり支離滅裂な言葉を叫んでみたりバンド名に放送禁止用語を冠してみたりする輩がいて、そういう人たちが世間から変態と揶揄されることがあります。

 

しかし、僕は思うのです。津野米咲こそが、本物の変態だと。

 

確かに初期の楽曲「のぞき穴」や「透明」を聴くと色モノっぽい雰囲気はあるけれど、そうじゃなくて、コード進行の当てはめ方とか、ピアノ経験者なのにギターをやってるとことか、本当に深い音楽の本質的な部分での変態。

ウィキのプロフィールの所に「いわゆる音楽オタクである。」とか並の作曲家でも書かれないですよね。

 

今作の両A面の1曲目「今更」のような歌モノもめちゃくちゃキャッチーに作れるうえ、「交信」のようなポップスのセオリーには無い変則的なコード進行を入れた曲も作れる器用さ。しかも20歳そこそこで。

 

あと、シングルのカップリングにはカバー曲が入っているのですが、その選曲もなかなか変態なんですね。褒めてます。平井堅のPOP STARは名曲。

 

 

さて、津野さんがどれだけ変態か分かっていただいたところで、そろそろ本題の「交信」について触れていきたいと思います。

 

この曲の変態ポイントはサビのコード進行にあります。

 

 

プロも驚くコード進行発明家

 

僕が言うと偉そうな感じになってしまいましたが、本当にこの人の作るコード進行は常軌を逸していて、音楽理論の知識を持つプロのミュージシャンの方々も絶賛しています。

対談などで明らかになっているだけでも、亀田誠二さんや蔦屋好位置さん、ハマ・オカモトさんなど。多分もっといるはず。

 

1サビのコード進行の最初を見てみると、

近頃は / なみだ / 朝日が / きらきらで

F / Am / C / Dm

と続いていて、一見普通に見えますが、実際に曲を聴いてみると何となく違和感がありますよね。

 

この部分、実は超専門的すぎてブログに書けるレベルじゃないのであんまり込み入った解説はできないです。これ以上アクセス数が減ってほしくない。

 

なので、ここからはただの音楽オタクが早口で解説いたしますので、本当に興味のある人だけ画面を止めて見てください。ほぼスルーで大丈夫です。

 

 

 

まあ、あれですよ、セカンダリドミナントっていう移調する時に使う技法みたいなのがあって、この曲のキーってFじゃないですかー。だから最初はFなんですけどー仮にキーがCだとしたらFってサブドミナントになるんですよね?つまり最初のFはキーFに対するトニックコードと見せかけて実はCに移調してるんすよ。すごくないですか?

で、そっからFの代理コードのAmに移行してCに移行するんですけど、ここまでだったらキーCに移調したまま完結するように思うじゃないですかー。でも次Dmなんすよ。ここでキーがFに戻るんですよ。マジでやべぇっすよ先輩。一旦物語は平和に収束したかに見せかけてまだ続くんですよ。マジ西尾維新もビックリっすよ。天才のそれなんですよ。

 

こちらからは以上です。お疲れ様です。

 

 

要するにサビの頭では変わってないはずのキーが途中で変わってて、また元のキーに戻ってくるんですね。それが最初の4つのコードだけで高速に処理されてるからすごいというわけ。

これを狙ってやっているのか否かは不明ですが、一歩間違うと不安定な響きになりかねないような、王道から踏み外したコード進行を取り入れる津野さんの変態性が伝わったかと思います。

 

 

***

 

 

ここまで赤い公園の天才性、能力の高さについて触れてきましたが、ボーカル佐藤千明の脱退という大きな転機が訪れた事により、バンドとしてのタフさが加わって、新体制の赤い公園がすごいことになっています。

 

現時点でMVが公開されている「消えない」「Highway Cabriolet」の2曲は、津野米咲さんのメロディーメイカーぶりが最大限に発揮された超キャッチーな楽曲に仕上がっています。何より石野理子のカリスマ性に惚れること間違いなし。

是非ご一聴ください。

 

 

今回はこの辺で。次回は「し」から始まる名曲を紹介します。

 

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しりとり名曲紹介 No.15 [いたちごっこ / チャットモンチー]

 

新年度が始まりました。昨年度はご愛顧ありがとうございました。

元号も発表され、例年よりも新鮮な気持ちで新年度を迎えた方も多いのではないでしょうか。

 

こんな忙しない時期にこの記事を読んでいる方は間違いなく変な人ですので安心して今日も音楽知識を肥やしていってくださいね。

 

 

 

 

概要

 

・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。

・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。

・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。

(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。

 

 

いたちごっこ / チャットモンチー

 

 

2000年に徳島市で結成、2005年にミニアルバム「chatmonchy has come」でメジャーデビュー。

当時は珍しかった女性スリーピースバンドという編成や、ボーカル橋本絵莉子の素朴な見た目に反した毒のある歌詞やキャッチーなメロディー、更に演奏隊のテクニックがチート級というおまけまで付いて、その人気はあっという間に全国レベルに上がりました。

 

しかし、2011年ドラム高橋久美子が脱退。その後ツーピースでの活動やサポートメンバーを迎えての活動を経て、2018年に惜しまれながら解散を発表しました。

 

この楽曲は2014年、高橋久美子が脱退した後、サポートメンバーを含めた5人編成で製作されました。

シングル「こころとあたま」と両A面シングルでの発売で、MVに当時無名だった吉岡里帆さんが出演し、その可愛さで話題にもなりました。

今見るとちょっと垢抜けてない感じがめちゃくちゃ可愛い。こりゃ売れるわ。

 

恐らくチャットモンチーを語る上でスリーピース時代は勿論欠かせませんが、今回は敢えてこの曲を紹介したいと思います。

この曲には作曲技法において語りたいポイントが一つあって、歌詞コード進行という二つの要素が上手く噛み合っているとても器用な楽曲なんでございます。

 

 

 

歌詞に応じて変化するコード進行

 

ここからは少し難しいお話になるのですが、ご了承ください。

 

この曲のイントロからAメロにかけてはEメジャースケールで進行していく上にセブンスなどのテンションコードもほぼ使用せず、まったく純粋な明るいコード感で進行していきます。

 

ここで最初の歌詞を見ていきます。

 

今日は気分がいいな まさに新品の心だ

日記書くのやめようかな もう枠におさまらない

まさに今頃の季節感を想像させる「明るい」イメージの曲なんだと印象づけられますね。

 

そしてBメロに入った時に、ちょっと雰囲気が変わるのが分かるでしょうか。

Bメロから頭のコードがC♯mになっており、同じキーの中でメジャースケールからマイナースケールへと変化します。

 

ここで注目すべきは歌詞。

 

愚痴みたいなうた 吐いて

サプリみたいなうた 食べて

野次みたいなうた とばして

説教じみたうた 食らって

 

と、コード進行と同じく少し後ろ向きな印象の歌詞が続きます。

 

そしてサビでも引き続きマイナースケールの進行に、やや不安げな心情が歌詞にも綴られています。

 

鈍感ではいられない街 ここ東京

純粋では報われない声 私はただ

うたいたいうたがなくなってくのが

こわいだけなんだよ

止まれない街 ここ東京

 

 

このように、歌詞と同じようにコード進行も変化していくという技法が使われていることが分かります。

 

世に溢れるポップスの大半は、イントロからサビまでメジャースケールかマイナースケールのどちらかに偏っているのがセオリーで、その方が曲としての印象が伝わりやすいからという理由もあるのですが、単純にこの技法は思いつかなかったという方が真意に近いのではないでしょうか。

コード進行だけで言えばスピッツの曲はAメロが長調でサビが短調になる手法を多用していたり、J-POPの中ではそんなに珍しい手法ではないのですが、いたちごっこのように歌詞が連動しているケースはマジで初めて聴いたかもしれない。

 

くそ、真面目に解説してしまった。

 

 

えっちゃん大人になる

 

ここからはチャットモンチーのファンとして、この曲が持つ切なさとかを伝えたいと思います。

 

この曲を書いた橋本絵莉子ことえっちゃんは、この曲がリリースされる1年ぐらい前に第1子を出産しているんですね。お相手はロックバンドtacicaのボーカル猪狩翔一さん。

女性は子供を産むと性格が変わるだとか、母になるとかよく言われますが、この歌詞を見るとえっちゃんの心境の変化が現れている気がしますよね。

 

女性アイドルに「卒業」という概念があるように、ロックバンドという商売はある程度不特定多数の異性への売り込みを要する仕事であり、男性のように「モテたい!モテるやつが勝ち!」というアホな考えよりは、現実的に一人の男性と子供を育てたいという考えの方が圧倒的に多いのが現実。

チャットと同じく昨年解散を発表したねごとも、「いつまで続けるんだという葛藤があった」とコメントしていたように、女性の考え方ではそれが普通だと言えると思うんです。

 

 

「うたいたいことがなくなってくのがこわいだけなんだよ」という1文は、えっちゃんの心からの本音だと思うし、先に脱退していった高橋久美子さんや家族の存在もあって、この曲を書いた辺りの時期には既にチャットモンチーの終幕を見据えていたのかなと思ってしまいますね。

 

ちなみにこの歌詞は酔っ払って書いたものだそう。個人的には生理中に書いたようにも見えるんですけど。

なんか、思春期みたいなのじゃない、すげぇリアルな大人の憤りみたいなのが現れている気がします。オカン怖い。

 

 

 

***

 

 

解散は寂しかったですが、四国という小さい島に生まれたもの同志ということで、昔から妙な親近感と誇らしさを感じています。

久美子とえっちゃんは結婚して幸せになったから、アッコは早くべボべのこいちゃんと結婚してください。ご報告待ってます。

 

 

今回はこの辺で。次回は「こ」から始まる名曲を紹介します。

 

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しりとり名曲紹介 No.14 [グレープフルーツちょうだい / ゆらゆら帝国]


昨日ぶりの方は、どうも昨日ぶりでございます。

3月更新が少なかったので、2日連続で更新してみました。実は前回の記事は1週間ほど前にほとんど書けていたので余力でズリズリと書いています。

 

早く終わらせないとこのペースだと50回更新するのに2年ぐらいかかりそうだったので、今後もたまに連続更新をするかもしれないです。

まあ、時事ネタでもないので好きな時に一気に読んでいただくのも手ですからね。

とにかく記事にした曲を聴いていただければそれ以上は何も望みません。成仏します。

 

 

 

概要

 

・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。

・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。

・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。

(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。

 

 

 

グレープフルーツちょうだい / ゆらゆら帝国

 

 

1989年結成、1998年にアルバム「3×3×3」でメジャーデビュー。2010年に解散したサイケデリックロックの筆頭と言える伝説のロックバンド。

 

ボーカル坂本慎太郎は現在ソロ活動を行っていますが、昨年日本で初めてのソロワンマンライブがチケット即完のプレミアライブとなるなど、コアな音楽ファンからの人気が根強いアーティストですね。

 

 

この楽曲は、ゆら帝メジャーデビュー前の1996年にインディーズでリリースされた「アーユーラ?」に収録されています。

なんとなく「空洞です」ぐらいなら知ってるぐらいの人であれば、ゆらゆら帝国といえばお洒落で脱力感のある、ちょっと変わったバンドぐらいの認識かと思います。

 

ところがどっこい「グレープフルーツちょうだい」でござるよ。もうタイトルからイカれてるんですよ。

 

 

 

ぶっ飛んでいる

 

正直、この一言で説明終われるぐらいのぶっ飛び具合なんですが。皆様そろそろ聴き終わった頃でしょうか。

人類が長い事長い事かけて作り上げた大衆音楽としての様式美を、開始1秒で台無しにするレベルの唐突な始まり。これは期待できそうじゃないですか。

 

初期のゆらゆら帝国の楽曲はこのパターンが非常に多く、イントロも無く唐突に始まる事が結構あるが故、開始1秒のインパクトがすこぶる大きいんですね。良いYouTuberみたいな感じですね。

歌詞に関しては逐一説明していたらキリがないのですが、簡潔にまとめるとずっと理解不能な事を言っているだけです。

 

まずこのブツブツ呟いている低音慎太郎と、遠くでヒステリックに叫んでいる高音慎太郎が、同時に同じ歌詞を読み上げ続けている状況が、私たち凡人に理解できると思って録音したのか問い正したいですよね。

ちなみに2004年にリリースされたベストアルバムにこの曲の再録バージョンが収録されたのですが、こちらは低音慎太郎のみになっています。

 

 

そして、ここまでならただのカオスなおふざけソングになってしまう所を、そうならないのが演奏技術の凄さ。

ギターリフだけ聴くとどちゃくそ硬派なガレージロックになってもおかしくないレベルの超正統派なリフを弾いています。坂本慎太郎はライブで語りとこのギターを同時に弾くので驚き。超実力派YouTuberであることが分かりますね。

 

 

 

ずっとふざけていてほしい

 

筆者は作詞作曲活動も行っていて、自分のバンドの曲を作っているとどうしても真面目に作った方がいいのかと考えがちになるんです。

それは僕に限ったことではなくて、特に音楽のストリーミング化が進んだここ2,3年ぐらいの売れ線で活躍するミュージシャンの方々は特に意識する事だと思います。

 

展開の不自然さだったり伝わりづらい歌い回しを排除したりする事もあったり、最近の音楽市場の流れから、曲が長いとウケない風潮があったりして、楽曲自体の長さを短くする努力をしたりと、何かと消費者目線で作りがちになってしまうんですね。

勿論それは間違ったことではないし、むしろ時代に適応するのは音楽のあるべき姿だと思います。

 

 

坂本慎太郎さんはゆらゆら帝国のインタビュー記事などで「ゆらゆら帝国は自分たちの好きな事をただやっているだけ、たまたま見た人が食いついてきてくれただけ」といった旨の事をよく言っていたのですが、本当に彼らの活動スタンスはその姿勢を貫いていて、いわゆる売れる為の音楽みたいなものをほとんど意識せずに活動していたバンドでした。

 

ゆらゆら帝国の歌詞は、どれを見ても一見支離滅裂でふざけているようなものばかりで、まるで漫画の世界観のようなシュールな歌詞ばかりなのです。

サウンドにおいても、メジャーとは思えないぐらい自由に遊びまくっていて、丸ごと1曲一般の女の人に歌わせたり子供に歌わせたりしていた事もある程。

ある意味打算的でないバンドであったとも思いますが、そのスタンスに憧れるミュージシャンやバンドマンも多く、ゆえに解散した今でもファンが絶えることが無いのです。

 

 

時代の流れに翻弄されて、バンドマンさえも商業的な事を考えて活動している昨今ですが、今こそゆらゆら帝国のような、ぶっ飛んだ音楽を聴いてほしい。

ロックバンドなら、とことんまでふざけてほしいと私は強く思っています。

 

 

 

 

***

 

今回はこの辺で。次回は「い」から始まる名曲を紹介します。

 

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