2023年下半期の良かったアルバムを紹介するよ 【邦楽6選・洋楽6選】
おはようございます。2023年もあっという間に終わりを迎えようとしています。
今年は自分の音楽活動に勤しんでいた事もあって新譜を追えていない時期もありましたが、最終的にはたくさんの名盤に出会えました。
今回も国内と国外6枚ずつ紹介していきます。チェケラー!
GRAPEVINE / Almost there
1993年結成のベテランロックバンド、GRAPEVINEの通算17作目となるフルアルバム。
前作「新しい果実」から約2年半ぶりとなる今作は、前作で獲得した確固たる独自性を踏襲しながらも更にアップデートされた強烈な個性を放つ11曲を収録。
メンバー全員が曲を書いたり、バンドセッションによる曲作りを行ったりと流動的な作曲スタイルを続けてきた彼らだが、今作では田中和将(Vo./Gt.)と亀井亨(Dr.)の2人がヒロトとマーシーのように半分ずつ曲を持ち寄って完成させている。田中の作るトリッキーな楽曲と亀井の作るお得意の美メロソングがバランスよく入っていて、これまでにないバラエティ豊かなアルバムとなった。
最初の先行シングルとして公開されたM-2「雀の子」は、ここ数年で作曲面でもメインを張るようになったボーカル田中によるカオスで意表を突くスリリングな展開の楽曲。
今作のアレンジは外部プロデューサーではなく、20年近く固定サポートを務める高野勲(Key.)が担当しており、亀井作曲のM-5「実はもう熟れ」等のシンセ主体の楽曲は特に聴き応えのあるアレンジとなっている。
結成三十年にして、この鮮度とクオリティを維持できるのは並の事ではないと思います。恐るべし。
くるり / 感覚は道標
こちらもベテランといえるオルタナティヴロックの金字塔バンド・くるりの新作。
リリース前から発表されていた通り、くるりの創設メンバーであり2002年に脱退した森信行(Dr.)を迎え制作されたアルバムであり、まさかの復帰にファンを驚かせた。
筆者も非常に期待しつつ、まあ岸田の事だから初期の音楽性に寄せた作品にはしないだろうと思っていて、概ねその予想は当たっていました。
先行シングルの「In Your Life」はUKインディーロック調のサウンドと切ないメロディラインの"くるり節"全開なロックナンバーだが、その一方でアルバム曲はかなり遊び心に満ちた楽曲が多い印象。
個人的なお気に入りはラストを飾るM-13「aleha」。発売前からライブで披露されていたバラードナンバーで、遠い未来に対する希望と恐怖を綴った歌詞とアコースティックなサウンドで心地良いエンディングを迎える。
オリジナルメンバー3人の絶妙な距離感だったり、照れ隠しのような悪ふざけと少しの本気が垣間見える秀逸な作品。
秋山璃月 / サルライター
2000年生まれの新人シンガーソングライター、秋山璃月のファーストフルアルバム。
10代限定のアマチュアコンテスト「未確認フェスティバル」で17才の時にグランプリを獲得し、その後バンド編成でのライブ活動やMV制作などの活動を経て、満を持して今作のリリースとなった。
彼の存在を知ったのは、11月に公開された今作のリード曲「リアリティとは?」のMVを見たことがきっかけでしたが、ファーストインパクトで完全に持っていかれました。彼は紛れもなく天才です。
作曲演奏ミックス作業をすべて1人で行う所謂"宅録"で作られた今作は、2000年以降のオルタナティヴロックに見られる性急な歌い回しや細かい譜割りに、フリッパーズ・ギターなどの渋谷系を思わせるキュートな音色をブレンドしたような全く新しい音楽性を確立させている。
2023年末の時点で3000回程の再生回数ではあるが、どこかで火が付けば大絶賛されるポテンシャルがあると思います。売れろ〜!
TESTSET / 1STST
ソロミュージシャンとしても活躍するLEO今井、砂原良徳の2人が中心となって結成されたバンド、TESTSETのファーストアルバム。
2014年にYMOの高橋幸宏らを中心に結成されたMETAFIVEが今年事実上の活動終了となってしまいショックだったが、程なくしてTESTSETの結成とアルバムが発表され、個人的にも嬉しかったです。
ダンサブルなニューウェーブロックM-2「Moneyman」はもちろん、New OrderやCabaret Voltaireといったポストパンクを含む80年代ニューウェーブの影響を強く感じるM-7「Over Yourself」など、硬派できめ細かい電子音と生楽器のアンサンブルが気持ちいい。
ギターは相対性理論の永井聖一、ドラムはGREAT3の白根賢一という異色の組み合わせだが、一流ミュージシャンの集まりともあって互いに打ち消しあう事なく見事に調和し合っている。
今年惜しまれつつこの世を去った高橋幸宏の意思を受け継いだ素晴らしい作品でした。
家主 / 石のような自由
2013年に田中ヤコブを中心に結成されたロックバンド、家主の3枚目となるフルアルバム。
野良の音楽好きだけでなく数々のミュージシャンから大絶賛された前作「DOOM」から約二年ぶりとなる今作は、ベテランの風格すら漂う安定感と確立された家主サウンドが遺憾なく発揮されている。
田中ヤコブの書く感傷的で共感を誘うM-2「きかいにおまかせ」やM-8「耐えることに慣れ過ぎている!」は今作もアルバムの核をきっちり担っている。
それだけでなく、リードギターの谷江俊岳によるハイファイな異色ナンバーM-3「庭と雨」や、ベースの田中悠平によるストレートなロックバラードM-7「オープンエンド」など、フロント三人それぞれが曲を書きリードボーカルを務めるスタイルも家主の良さとなっていて、今作はそれらの個性がより際立っていて面白かった。曲数のバランスもちょうど良く、つくづく全てにおいてセンスが良いバンドだなと思わされる。
現役オルタナロックの中でもトップクラスに好きなバンドなので、末永く続けて欲しい。ライブも行こう。
Lamp / 一夜のペーソス
2000年に結成された3人組音楽ユニット、Lampの5年ぶり9作目となるアルバム。
大掛かりな宣伝やライブ活動をあまりやらずにマイペースな活動を続けていた彼らだが、海外から火が付いた日本のシティポップブームの影響により多くのリスナーに発見され、ここ数年で一気に知名度を上げた。
そんな予想外の現象を経て満を持してリリースされた今作は、全20曲収録時間70分超えの大作となった。
大きく前半と後半の2部構成となっており、前半はスタンダードなLampの新曲が中心で後半は組曲のような流れを意識した構成となっている。
一見するとサラッと聴き流してしまえる良質なポップソングだが、1曲1曲の音の配置や音色のこだわりは凄まじく、特に後半ブロックのサウンドスケープは圧巻。
ライブ活動を殆どしない彼らにとってレコーディングが活動のメインだとインタビューでも度々語っているが、今作はその気概を痛いほど感じられる作品でした。
Blur / The Ballad Of Darren
ブリッドポップを代表するイギリスの大御所バンド、Blurの約8年ぶりの新作。
2015年に復帰作となる「The Magic Whip」をリリースするも、バンドとしての活動は近年殆ど無かったので突然のリリースにファンは大歓喜。筆者もその一人です。
今年の2月にはデーモン・アルバーン(Vo./Gt.)のサイドプロジェクトでもあるGorillazの新譜もリリースされたが、その反動からなのかGorillazのヒップホップ的アプローチとは掛け離れたシンプルなバンドサウンドが聴けるアルバムとなっている。
先行シングルとして配信されたM-7「The Narcissist」は、Blurにありそうでなかったエモーショナルで切ないメロディラインの名曲。個人的にはデラックス盤に収録されている新曲「The Rabbi」のようなポップな曲も非常に好きでした。
前作のような実験的な瞬間も所々には見られるが基本的にはシンプルにメロディと歌詞をじっくり聴かせるタイプの作品。地味と言えば地味だが、個人的にはこういうの待ってた!って感じで好きでした。デーモンは生粋のメロディーメーカーだと思っているので。
Sampha / Lahai
イギリスロンドン出身のシンガーソングライター、Samphaの7年ぶりの新作。
上半期でも少し触れましたが、今年は7,8年ぶり級の待望の新作が本当に多かった年でした。そんな中でもかなり度肝を抜かれたのがコレ。
エレクトロソウルとも呼ぶべき独自のサウンドメイキングでデビューアルバムから相当高い評価を受けた彼だったが、そんな前作とも全く異なるフェーズに居るような衝撃的な内容。
M-1「Stereo Color Sound」の、鍵盤とドラムが爆速で絡み合うイントロから既にハイライト級のインパクトを放つ。続くM-2「Spirit 2.0」にも見られるジャズの要素とR&B歌唱が見事に調和し、既存の型にハマらない全く新しい音楽を提示している。
それでいて歌メロの旨味も損なわれておらず耳馴染みも良く非常に完成度が高いアルバムでした。個人的年間ベストを選ぶとすればこのアルバムかな。
Yussef Dayes / Black Classical Music
UKジャズムーブメントの先駆者とも言われるドラマー/マルチ・インストゥルメンタリスト、ユセフ・デイズのソロ名義では初となるアルバム。
2020年のトム・ミッシュとのコラボ・アルバム『What Kinda Music』が大きな話題となり、後のEzra Collective等のUKジャズムーブメントをより活発にした立役者でもある彼の新作は、全19曲の大作。
盟友トム・ミッシュや、世界各国のジャズプレイヤー、名だたるソウルシンガーに家族までフィーチャリングした豪華すぎる内容で、通して聴くと贅沢なワンマンライブを見ているような満足感が得られる。
一口にジャズといえども、根底にあるのはダンスだったりキャッチーさに振り切った作風と言えるので、ジャズに抵抗のある方も気軽に楽しめると思います。
海外版THE FIRST TAKEとも言えるYouTubeコンテンツ"A COLORS SHOW"にて披露されたM-10「Chasing The Drums」のパフォーマンスも圧巻。
Wilco / Cousin
GRAPEVINEのメンバーも敬愛するアメリカのロックバンドWilcoの13作目となるアルバム。
2枚組の超大作となった「The Cruel Country」からわずか1年でリリースされた本作は、自身もミュージシャンとしても活躍するケイト・ル・ボンをプロデューサーに迎え制作された。
前作がシンプルに良い曲を詰め込んだ作品集のようなアルバムだったのに対し、全10曲のコンパクトな構成の中で緩急のついたアルバムらしい仕上がりで個人的には好みでした。
M-4「Evicted」のようなWilcoらしい爽やかなカントリーロックはもちろん、後半のM-8「Pittsburgh」やラストのM-10「Meant to be」など荘厳で強靭なバンドサウンドも今までになくシリアスで手の込んだアレンジとなっている。
2024年には来日公演も決定しているWilco。これらの楽曲がライブでどう化けるか楽しみだ。
Blake Mills / Jelly Road
プロデューサーとしても数多くの名盤を手掛けるシンガーソングライター、Blake Millsのソロ5作目となるアルバム。
前作「Mutable Set」の実験的な音響と生楽器のアンサンブルが非常に素晴らしく、今作はその延長にありつつも目立った変化球は無く、よりソングライティングに重きを置いた作風となっている。
徐々に音数を増していくバンドサウンドに牧歌的な歌唱が乗るM-4「Skeleton is Walking」など、シンプルな中により巧妙に実験的要素を盛り込んだ職人技を堪能できる。
じっくり腰を据える必要もなく、穏やかに身を任せるように楽しめる1枚でした。年を取ったせいかこういうアルバムを聴きたくなる時が増えてきたなぁ。
Oscar Lang / Look Now
The 1975らを輩出する名門レーベル"DIRTY HIT"に所属するシンガーソングライター、Oscar Langの3作目となるアルバム。
ここ数年の筆者の年間ベスト記事で毎回DIRTY HITのアーティストを挙げている気もするが、もうしょうがないよね。好きなんだもん。
約2年ぶりの新作となる今作は、プロデューサーにコーラルやブロッサムズを手掛けたリッチ・ターヴェイを迎え、彼の持ち味であるフォーキーでサイケデリックな部分を活かした上質なポップスが収められている。
ブリッドポップの大名曲であるヴァーヴのBittersweet Symphonyを彷彿とさせるM-1「A Song About Me」や、6度の和音が鳴り続ける緊張感たっぷりのバラードM-9「Oh God」など、ギターだけでなくピアノも駆使し巧みなソングライティングと王道な声を持つボーカルが合わさる。
彼のルーツであるOasisやプログレ音楽の影響をうまくオリジナルに落とし込んでいて、良い意味で懐かしさも感じる安心感のある作品でした。
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最後に今年もApple Musicで、個人的年間ベストをまとめたプレイリストを作りました。
上半期も含めて国内と国外それぞれ50曲ずつ合計100曲の大ボリュームになっているので、通勤時間などにシャッフルで聴くことをお勧めします。
それでは、来年も皆様が良い音楽に巡り会える事を願ってます。良いお年を!
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土居泰地の2023 年間ベストトラック - Apple Music
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