諂諛

音楽好きによる音楽好きの為の雑記。

2022年下半期の良かったアルバムを紹介するよ【邦楽3選・洋楽3選】

 

こんスピ!

 

 

今年はからあげクンの値上げを筆頭に様々なニュースが世間を騒がせました。

私は相変わらず音楽を聴いて、音楽を作って、音楽を演奏するだけのマシンミュータントと化していました。

 

上半期に続いて、2022年7月~12月リリースの個人的に特に良かったアルバムを厳選して紹介していきます。

上半期編を見ていない方は、そちらも是非ご覧ください。

 

 

 

マハラージャン / 正気じゃいられない

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2019年に謎の覆面アーティストとして現れ、クセになる楽曲が話題となり昨年メジャーデビュー。その後THE FIRST TAKEにも出演し注目を集め、満を持してリリースされたマハラージャンの1stフルアルバム。

ファンクをベースとした上質なサウンドに、クスッと笑える奇抜な歌詞が乗る独自のスタイルが特徴。昨年のデビューEPの表題曲「セーラ☆ムン太郎」は、僕の2021年ベストトラックにも選んだほど好きなアーティストです。

 

先行配信されたシングル3曲に加えて、オープニングを飾るカオスなファンクロック「正気じゃいられない」、タイトルからは想像できないクールなナンバー「鼻の奥に米がいる状態」、より幅広い世代にリーチするように作られたポップチューン「その気にさせないで」と、完成度の高い楽曲がこれでもかと連打していくM-1~M-3の流れは圧巻。超楽しい。

個人的ハイライトはM-6「エルトン万次郎」。"おまじない それはイマジン"とあるように、真っ先に連想されるあの単語を敢えて口にしない斬新な切り口の歌詞が印象的な一曲。こういう細かいギミック一つ取っても、彼の豊かなインテリジェンスが伺える。

 

上質なサウンドであることは間違いないが、決して量産型ではなく新機軸を生み出そうとする姿勢が表れていて、令和の多様な音楽シーンをより豊かにしてくれる素晴らしい作品でした。ブラボー。

 

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SuiseiNoboAz / GHOST IN THE MACHINE DRUM

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2007年結成、幾度かのメンバーチェンジを経て現在はフォーピースでの活動をしている孤高のオルタナティブバンドSuiseiNoboAz(スイセイノボアズ)。

 

前作から約2年ぶり、通算6作目となるアルバム「GHOST IN THE MACHINE DRUM」は、彼らの創作意欲が爆発した大傑作でした。

イギリスのバンドThe Policeのアルバムをもじって付けられたと思われるタイトルからも想像できるように、無機質で冷たい張り詰めた空気が通底して漂っている。

 

彼らの特徴でもあるポエトリーとラップの中間のような独特のリズムで詠われるリリックは今作も健在だが、前作「3020」にあったエモーショナルな熱は影を潜め、それこそマシンのように淡々と刻むリズムと語り口で進行していく。

しかしながら、先行シングルにもなったM-2「THE RIDER」とM-7「群青」のような穏やかなメロディラインが光る曲も良いアクセントとなっており、全8曲37分と短尺でサクッと聴けるのも魅力。

 

タイトルトラックのM-2「GHOST IN THE MACHINE DRUM」は、一見シンプルに聴こえるが実はかなり複雑に構築していて、コード進行も特殊な動きばかり。既出のオルタナティブロックの楽曲を漁っても似た楽曲が見つからない、唯一無二の楽曲となっている。

個人的なお気に入りはラストの「YOMI」という楽曲で、打ち込みのシンセ音と加工された声のかなり異質な曲なんですが、タイトルの通りこの世ではない別の世界で鳴っているような、不思議と耳に残る楽曲です。

 

こういう”好き嫌いは置いといて質は間違いなく高い楽曲”を量産できるバンドがまだ日本で活動しているという事実、プライスレス。

 

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Bialystocks / Quicksand

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甫木元空(Vo, G)と菊池剛(Key)からなる2人組のバンド。映画監督でもある甫木元の初監督作品「はるねこ」の生演奏上映をきっかけに結成された。

2021年に1stアルバム「ビアリストックス」をリリースした後、Official髭男dismらが所属するIRORI recordsよりメジャーデビュー。今作がメジャー1作目のアルバムとなる。

 

僕は今作で彼らを知ったのですが、正直デビューしたばかりとは思えない安定したソングライティングと演奏力のグループが出てきたなという印象。

コンポーザーを務める菊池さんは海外でジャズを学んだ経歴があり、ポップでありながら音楽的な基礎値の高さが楽曲に顕著に表れている。

ボーカルを務める甫木元さんの柔らかいハイトーンボイスも相まって、オルタナティブだけど穏やかな温かみのあるサウンドに纏まっている。

 

ポップスを意識して作られたというリード曲M-6「Upon You」は、今作の中でも一際メロディが立っていて多幸感に溢れる文句なしの名曲。歌詞の言葉選びが独特で、心地良いサウンドに良いアクセントをもたらしている。

個人的にもう一曲推すならばオープニングを飾るM-1「朝靄」。ピアノとボーカルのみで淡々と同じリズムのメロディを繰り返すAメロが印象的な楽曲。映画のサントラの為に結成されたグループなだけあって、こういう風景描写に特化した楽曲はかなりクオリティが高いと思います。ジブリみがある曲。

 

ちなみにボーカルの甫木元さんは現在、高知県四万十町に移住しているとのことで、実は私の生まれ故郷なんです。ありがたいですねぇ~。

 

Quicksand

Quicksand

  • Bialystocks
  • J-Pop
  • ¥2241

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The 1975 / Being Funny In a Foreign Language

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ここから洋楽。

まずは2022年最重要と言っても過言ではない話題作、The 1975の新譜。

 

The 1975はイギリスで結成されたロックバンド。80年代のUKロックを下地に、エレクトロやダンス、アンビエントなど多様なジャンルを融合させ現代的に昇華させた完成度の高いポップスで人気を博している。

ボーカルのマシュー・ヒーリーは、女優と俳優の息子という超サラブレッド坊やでもあり、ルックスや才能にも恵まれたカリスマ性の高いボーカリストだ。

そんな生まれ持った資質に恵まれた人間よりも、俺は地の底から這い上がった人間の作る曲に愛情を費やしたいんや!と意固地になって、実は最近までしっかり通ってこなかったバンドなんですが、今作は紛れもなく傑作です。悔しい。

 

前作「Notes on a Conditional Form」は結構シリアスな楽曲が多く、曲数も全21曲総収録時間1時間20分近くという超大作だったのもあり、取っ付きづらさも拭えない作品であった。

しかし今作は全11曲約41分と簡潔な内容で、前作に見られたエレクトロ要素も影を潜め生のバンドサウンドによるアンサンブルに回帰したスタンダードな良曲が揃った作品だった。

ジャケットだけ見ると暗い内容なのかと思うが全然そんなことは無いです。

 

LCD Soundsystemの名曲を彷彿とさせるイントロから始まるオープニング「The 1975」から、ファンク調の軽やかなサウンドで踊らせるM-2「Happiness」、ミドルテンポで心地よいドリーミーなM-6「I'm in Love With You」The Shinsなどの2000年代インディーロック的なアプローチのM-7「Wintering」など、まさに捨て曲無しと言える良質なポップスばかりで、洋楽に取っ付きづらさを感じている方への入門にもうってつけな作品と言える。

後半のハイライトM-9「About You」は、女性ボーカルを迎え壮大なサウンドスケープと忘れられない恋人への思いを描く傑作。これだけでもこのアルバムへの評価を高くせざるを得ないレベルの名曲です。

 

作品を出すたびに期待値が上がりまくっているが、そのハードルを軽々と飛び越えたハイクオリティな作品でした。そら売れるわな!

 

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DOMi & JD BECK / NOT TiGHT

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2000年生まれのキーボーディストDOMiと、2003年生まれのドラマーJD BECKによるジャズユニットのファーストフルアルバム。

 

音楽業界に定期的に現れる、若くして圧倒的な才能と経験値を持ったスーパープレイヤー枠と言えるだろうが、彼女たちのスキルと音楽センスは別格です。

ドラムのJD BECKは12歳にしてプロデューサーとしての仕事を始めるなど桁違いのキャリアを持っており、良い意味で微塵も若さを感じない円熟味すら感じるアルバムとなっている。

 

近年ThundercatやLouis Coleを中心に国外で盛り上がりを見せるデジタル・ジャズ的なアプローチもありながら、基本的にはキーボードとドラムの2ピース編成の音だけで楽曲を構築している。

曲によってはかなり迅速なドラミングと手数の多いリフでジャズコア的な楽曲もあり耳が楽しい。

フューチャリングで参加しているアーティストも、Thundercat、マック・デマルコ、アンダーソン・パークなど名実共に優れた豪華な面々となっている。

中でもThundercatが参加した表題曲M-5「NOT TiGHT」はハイスピードなジャズコア風のサウンドで、耽美な狂気を生み出している。

 

弱冠20歳、まだデビューしたばかりとは思えない貫禄と革新性を帯びた作品です。

僕が彼女たちに勝てることといえば、寝起きの口の臭さぐらいしか無いです。大人なめんなよ。

 

NOT TiGHT

NOT TiGHT

  • ドミ&JD・ベック
  • ジャズ
  • ¥1935

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Drugdealer / Hiding in Plain Sight

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ロサンゼルスのサイケデリック・シーンで活動するMichael Collinsのソロプロジェクト、Drugdealerの3作目となるアルバム。

70年代のサイケロックを想起させるサウンドと現代的なアプローチを掛け合わせ独自の音楽を生み出す彼の待望の新作は、期待を超える最高の作品でした。

 

前作「Raw Honey」は、パッキパキに乾いたギターとドラムで淡々と刻む陶酔感が漂っていたが、今作は音のレンジが格段に広がった事で、よりメロディアスでグルーヴィーな音像にシフトしており、心地良く体を揺らす事ができる作品となっている。

心地良いエレピの音と重厚なコーラスを重ね華やかにオープニングを飾るM-1「Madison」、西海岸の香りを感じる軽やかなM-2「Baby」、全編通して女性ボーカルのロマンチックなM-4「Pictures of You」など、これぞ本場のグルーヴと言わんばかりの上質なトラックとボーカルの応酬にドーパミンがドバドバエビオス

中でも今作のリードトラックとなるM-3「Someone to Love」は、Drugdealerのキャリアを通しても最高傑作と言える名曲。

決して派手な音作りではないにも関わらず必要な音はすべて揃っていて、そこに乗るメロディが抜群に心地良い。マイケル・コリンズ本人がボーカルを務める楽曲は意外と少ないが個人的にはもっと歌ってほしいと感じた。

 

往年のサイケロックやファンクの名盤にも引けを取らない名作。必聴です。

 

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最後に、2022年の個人的ベストトラックをまとめたプレイリストを、Apple Musicで共有できるように貼っておきます。

国内50曲+国外50曲の計100曲という大ボリュームになっているので、どうか気軽に無理なく全曲聴いてください。

 

それではよいお年を。

 

 

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土居泰地の「2022 年間ベストトラック」をApple Musicで

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