2023年上半期の良かったアルバムを紹介するよ 【邦楽6選・洋楽6選】
皆様ごきげんよう。
今年で5回目となるベストアルバム記事ということで、今年から紹介するアルバム数を2倍に増やしてみました。
そのおかげで6月末までに書き終わらないどころか1ヶ月もオーバーしてしまいました。てへぺろ。
皆様のベストアルバムが一つでも選ばれていることを願って、早速紹介していきたいと思います。
スピッツ / ひみつスタジオ
結成36年、通算17作目となる日本の重鎮ロックバンド、スピッツの待望の新作。
鬱屈としたコロナ禍の最中に製作された本作は、ロックバンドの初期衝動と瑞々しさをそのまま具現化したような、スピッツ史上最もポジティブに振り切った作品なのではないだろうか。
大ヒットを記録したM-4「美しい鰭」を中心に、ポップス然とした親しみやすいメロディに比重を置きつつも、不意に変拍子を突っ込んだりパンクサウンドを取り入れたりと、しっかり"ロック"しているのも素晴らしい。
コロナ禍の反動で明るい作品を世に送り出したアーティストは他にも居たが、お茶の間から机上の音楽ヲタクまで幅広く支持されるスピッツが私たちに寄り添ってくれる事が本当に嬉しかった。
36年もの間、絶やすことなく創作への探求を続けてきたスピッツからの最高のプレゼントでした。天晴。
APOGEE / Sea Gazer
2001年結成のニューウェーブロックバンド、APOGEEの通算6作目。
2014年より自主レーベルからのリリースとなり、スローペースながらもハイクオリティな作品を発表し続けている彼ら。約5年ぶりとなる今作も期待を裏切らない大傑作でした。
前作「Higher Deeper」ではエレクトロ路線に深く突っ込んでいたが、今作は打って変わって生のバンドサウンドが主導のロックアルバムとなっている。
中でもリード曲となるM-1「遠雷」は、印象的なギターリフから始まりハイトーンボイスとプログレ的展開が巧妙に絡み合う、彼らのキャリアを通しても最高傑作レベルの名曲だと思います。
メインストリームからは外れたかもしれないが、こうして作品を作り続ける事を生業としている姿が非常に美しく、真っ直ぐ憧れちゃう。そんな人たちです。
People in the Box / Camera Obscura
2003年に福岡県で結成されたスリーピースバンド、People in the Boxの4年ぶりとなる新作。
変拍子や難解なフレーズを駆使するテクニカルな音楽性で作品を出す度に音楽ヲタク界隈を賑わせてきた彼らですが、今作は一際完成度の高い作品だったのではと思います。
シューゲイザーとハードロックを悪魔合体させたようなM-1「DPPLGNGR」や、不穏なイントロから明るいサビへのコントラストが印象的なリードトラックM-2「螺旋をほどく話」など、ここ数作の中では比較的キャッチーで色彩豊かなナンバーが並ぶ。
しかしながら、音のテクスチャーや歌詞のレトリックは気が遠くなるほど緻密。聴く度に新しい発見が絶えないアルバム。
結成20年を迎え、積まれた経験とアイデアを惜しみなく継ぎ込んだ職人技。流石です。
女王蜂 / 十二次元
2009年に神戸で結成されたロックバンド、女王蜂の8作目となるアルバム。
奇抜なルックスとハイトーンボイスを駆使した楽曲で注目を集め、徐々に知名度を上げ2019年にリリースした「火炎」で大ブレイクを果たした。
数々のタイアップシングルを含んだ今作は、幅広く克つ攻撃的でアッパーな楽曲が多数収められている。
取り立て屋をテーマにしたM-1「油」は、久し振りに”和”のテイストを前面に押し出したイカついダンスロックで、売れ線を突っ走るバンドとは思えないダークユーモアに溢れた面白い1曲となっている。
ここまで自由度の高い作品をしっかりマスに届けられるカリスマ性とソングライティング力は稀有な存在だと思います。
パソコン音楽クラブ / FINE LINE
2015年に結成された二人組DTMユニット、パソコン音楽クラブの4作目。
ビンテージのハードモジュレーターなどのアナログ機材を多数所有し、懐かしさを感じるテクノサウンドが持ち味であるパ音の待望の新作。
これまで一貫したテーマを設けたコンセプチュアルな作品を多くリリースして来たが、今作は敢えてアッパーなクラブ直結ナンバーを多数収録した楽しい作品となった。
先行シングルとしてリリースされていたM-5「KICK&GO feat.林青空」や、パ音流ジャズコア風テクノM-6「Dog Fight」などユーモアに溢れた楽曲も聴きどころだが、ラストを飾るM-13「Day After Day feat.Mei Takahashi (LAUSBUB)」は、壮大なテーマと渾身の泣きメロが炸裂する今作最大のハイライト。こんな曲作れたら気持ちいいやろなぁ。
cero / e o
2004年結成の東京発バンドceroの5th。 約5年ぶりのアルバムとなる今作は、2020年から配信されていた4曲の先行シングルを含む(全曲リアレンジ)全11曲。
初期のヒップホップ〜ネオソウル的アプローチはすっかり色褪せ、ジャズやゲーム音楽からの影響を感じられる緻密で予測不能なコードワークが鳴り続ける異色作。一歩間違えると崩壊しかねない奇跡的なバランス感覚で構築された楽曲がズラリと並んでいて圧倒される完成度。ロックバンドでここまでの次元に達した作品は過去に無いのでは。
M-5「Fuha」の日比谷野外音楽堂でのライブ映像が公式にアップされており、これがまた非常に素晴らしいです。楽曲が持つ神秘性とライブならではの肉体性がガッチリ融合し、見たことのないサウンドスケープが広がっています。
今後のオルタナティブシーンにも大きな影響を与えうる金字塔と言える作品。こりゃすげぇ。
Daughter / Stereo Mind Game
イギリスのインディーロック界を代表するバンド、Daughterの約7年ぶりとなる待望の新作。
前作に引き続き名門レーベル4ADからのリリースとなる今作は、ロンドンの名アンサンブル、12 Emsembleと聖歌隊が参加しサウンド面でも非常に質の高い作品となっている。
エレナ・トンラの繊細で儚い歌声は7年経った今も健在で、リードトラックのM-2「Be On Your Way」ではRadioheadのトムヨークを想起させる揺らぎが心地よく、M-6「Swim Back」では強いビート感をより引き立たせる役割を果たしている。
似たような後発バンドは数あれど、間違いなく替えの効かない存在であることを証明してくれた会心作。末永く続いてほしいバンドの一つ。
Unknown Mortal Orchestra / V
ニュージーランドを代表するサイケロックバンド、Unknown Mortal Orchestraの5th。 こちらも約5年ぶりのアルバムということで、今年は待ちに待った新作が豊作の年でした。
楽曲自体は非常に緻密で高水準ながらも、どこかB級感を漂わせる音作りとMVが心地よく、今作もその絶妙なバランス感覚は健在。
前作に比べるとよりサイケ感を前面に押し出した印象はあるが、初期のアルバムのような取っ付き辛さもない丁度いい塩梅のアルバムなのでは。入門編としても至適。
2021年にリリースされた先行シングルM-6「That Life」は、可愛らしくもどこか奇妙な操り人形が踊り続けるMVも含めて特に大好きな1曲で、イントロの3連符を駆使したギターリフも大発明だと思います。
Paramore / This Is Why
アメリカのテネシー州で生まれたロックバンドParamoreの通算6作目となるアルバム。
デビュー時はエモパンクバンドとして10代を中心に人気を博したが、作品を重ねるごとに様々なジャンルをオーバーラップしていき多方面からの評価を獲得している。
そんな彼らの待望の新作は、まさかのオルタナ全開で攻めに全振りした内容となっており、初期のパブリックイメージを悉く覆す作品となっている。ONE OK ROCKが急にGRAPEVINEみたいな音楽性をやり始めたぐらいの意外性。
それなのにParamore本来のキャッチーさと人懐っこさは全く削がれておらず、旧知のファンも置いてけぼりにしないアルバムとなっていて感心。
タイトルトラックM-2「This Is Why」はオルタナ好きなら間違いなくハマる必聴ナンバー。どうやったらこんなサビ思い付くねん。
Sigur Rós / ATTA
北欧はアイスランドのレイキャビクにて結成されたポストロックバンド、Sigur Rós(シガーロス)の10年ぶりとなる新作。
バンドの黎明期を支えたマルチインストゥルメンタリスト、キャータン・スヴェインソンの脱退、そして復帰を経て間もなく完成された本作は、もはやワールドクラスとなった彼らの復活を祝福するような、壮大でディライトに満ちた作品。
M-2~M-4にかけて徐々に音数が増えていく構成は鳥肌モノで、ロックバンドという制約をまるで感じさせない音像が成り立っている。後半のハイライトM-6「Andrá」は、初期のシガーロスを思わせる懐かしい響きに包まれる感動の1曲。
社会への強烈なメッセージと音への執着がコンパイルされた名作。夏の終わりにいかがでしょうか。
Panchiko / Failed at Math(s)
謎多きインディーロックの新星、パチンコではなく"パンチコ"の20年以上ぶり(?)となる新作。
2000年頃に知り合いのみに配布された自主制作盤「"D>E>A>T>H>M>E>T>A>L」が、2016年頃にネット掲示板にて発掘され話題に。その噂が本人まで届きバンド再結成まで漕ぎ着けた、という嘘みたいなストーリーを経たバンドである。
そんな彼らの新作は、前述の自主制作盤のテイストとは大分色味の異なるゴシックなポストロック風の作品で、toeやdownyといった日本のバンドが好きな人に刺さるのでは。
何より彼らのサクセスストーリー、巷では彼らがマーケティングの為に仕込んだフィクションなのではとも囁かれている。そんな所も含めて非常に面白いバンドで個人的に大注目しています。信じるか信じないかはアナタ次第。
The Japanese House / In The End, It Always Does
イギリスの名門レーベルDirty Hit所属のシンガーソングライター、The Japanese Houseの2作目となるフルアルバム。
前作「Good at Falling」の発表から約4年の間で、彼女の身に起こった様々な出来事と、それに対峙する心象を綴った全12編からなる。
レーベルメイトであるThe 1975のMatthew Healyを迎えてレコーディングされたM-9「Sunshine Baby」、アコースティックギター主体の切ない失恋ソングM-5「Sad to Breathe」など、煌びやかで繊細なアンサンブルで奏でられる耳心地の良い楽曲が詰まっている。
ハイライトとして挙げたいのは先行シングルとしてリリースされていたM-6「Boyhood」。取り払うことのできない先天的なマイノリティについて綴った赤裸々な歌詞と、エレクトロニカを想起させる細やかな電子音の響きが印象的な1曲。宇多田ヒカルなど日本のシンガーが好きな方にもお勧めしたい。
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今回もブログで紹介しきれなかった2023年上半期の個人的ベストトラックをプレイリストにまとめております。
今年も豊作の予感がします。では下半期でまた会いましょう。
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土居泰地の「2023年上半期ベストトラック」をApple Musicで
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