しりとり名曲紹介 No.12 [クロノスタシス / きのこ帝国]
なかやまきんに君のアーノルドシュワルツェネッガーの正しい発音の動画で何回見ても笑ってしまう系男子の落第です。
概要
・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。
・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。
・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。
(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。
クロノスタシス / きのこ帝国
2007年結成、2012年に「渦になる」でDAIZAWA RECORDSよりインディーズデビュー、2015年に「桜が咲く前に」でメジャーデビューしたロックバンド。
まさかの前回のCONDOR44から連チャンでDAIZAWA RECORDS所属バンド。自分でもびっくりなのですが、筆者がYoutubeで音楽を探し始めた最初の頃に知ったレーベルなので、僕自身も好きなレーベルではあります。
2ndアルバム「eureka」までは、シューゲイザーやポストロックの影響を受けた轟音ギター鳴りまくりのサウンドがコアな音楽ファンから人気でしたが、ボーカル佐藤千亜妃のクールで美的なルックスが話題になっていました。
そして、その後リリースされた「東京」は、それまでのきのこ帝国とは少し毛色の違うエモーショナルな直球サウンドで、ラジオや口コミを中心にヒットしました。
一気に知名度が広がったタイミングで発表されたアルバム「フェイクワールド ワンダーランド」は、翌年のCDショップ大賞にノミネート、某ブログ記事の読者が選んだ2014年のベストアルバムランキングでは2位にランクインするなど、きのこ帝国の代表作となりました。
「クロノスタシス」は、そのアルバムのリード曲であり、非常に人気の高い楽曲でありますが、僕はずっと、この曲について大変失礼な疑問を一つ抱いていました。
変な曲
いや、待ってくれ。炎上してもいいが僕の話を聞いてからにしておくれよ。
日本の音楽において、評価とは別に流行る音楽とそうでない音楽はある程度明白なラインがあって、一つはまず構成が分かりやすいということだったり、あるいはサビのメロディーラインのキャッチーさ、サビに向かうまでの助走が分かりやすい上昇のし方をしていたり、つまりJ-POPという大きな枠組みの中に如何に良質なメロディーを詰め込めるかという点が流行のポイントになっているのです。
もう言いたいことはお分かりかと思いますが、この曲が流行るはずがないんですよ。普通に考えれば。
だって、そもそもきのこ帝国といえばシューゲイザー直系のホワイトノイズぶっこんだり、長尺な曲も結構あったり、大衆には受け入れられて来なかった音楽をやっていたバンドなわけですね。
インタビューなどでも、フェイクワールドワンダーランドではポップスを意識的に取り入れたと発言しているだけあって、かなりメロディーがメロディーとして機能する曲が増えはしたものの、1年前まで春と修羅のような狂った曲を歌っていたバンドが何故ここまでファン層を広げたのか。その理由がこれ。
メロディーに頼らないキャッチーさ
突然ですが、Pharrel WilliamsのHAPPYという楽曲をご存知でしょうか。CMなどでも有名な、めちゃくちゃ流行ったあの曲。
あの曲の最初を聴いていただきたいのですが、クロノスタシスの始まり方と同じなんですね。
つまり、この曲はヒップホップのサウンドを意図的に取り入れていて、J-POP的な響きがしない大きな理由ですね。
このサンプリングっぽい"タッタッタッタッ"というリズムを人力でやってしまうのが何ともお洒落。
そしていきなり歌に入るのですが、最初の4行でこの曲の言いたいことはすべて言い終わっている気がするんです。
コンビニエンスストアで 350mlの缶ビール買って
きみと夜の散歩 時計の針は0時を指してる
“クロノスタシス”って知ってる? 知らないと君が言う
時計の針が止まって見える 現象のことだよ
最初聴いた時は、ここがAメロで後にサビが来ると勝手に思い込んでしまう日本人の悪い癖が出がちですが、最後まで聴くとどう考えてもこのラインがこの曲のメインであり、サビ的な役割であることが分かります。
そう、ここが要するに「メロディーに頼らないキャッチーさ」ということ。
主人公が「いつ、どこで、誰と、何をして、さらに何があって」という情景の描写が何一つ欠ける事無く簡潔にまとめられていて、聴き手がどう手に取っても同じ風景を想像できる。というか想像せざるをえないレベルなんですね。
しかも「コンビニ」「缶ビール」「夜の散歩」という情景が特に大学生ぐらいの若い層にはドンピシャで共感できる場面であることも、人気に火が付いた理由だと思いますね。ちなみに僕はビールが飲めないので惜しくも共感ビンゴ達成ならずでした。
共感ビンゴって何ですか?
勿論歌詞を追っていくとストーリーや背景がもっと深く描かれていくのですが、ポップスにおいて大事な要素である「短い時間にどれだけ良い要素を詰め込めるか」という点で、この最初の30秒は聴き手の興味を引き付ける上で完璧なラインであることが分かります。
邦楽の傾向としては、このような情景描写に重きを置いた歌詞よりも、心情の動きをロマンチックに表現したものやメッセージ性のあるものが共感されがちですが、その傾向を打ち破ったと言える、革新的な1曲だと思います。
以上を踏まえて、改めてこの曲を聴いていただければ、少し違った見方ができるかと思います。
やっぱり、佐藤千亜妃は美人だよね。
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今回はこの辺で。次回は「す」から始まる名曲を紹介します。