しりとり名曲紹介 No.22 [夜にダンス / フレンズ]
6月はめちゃくちゃライブに行ってまして。
People in the Box、THE NOVEMBERS、tacica、GRAPEVINE、アルカラ、ストレイテナー、ACIDMAN、THE BACK HORN等々、、
僕を音楽漬けにしてくれた錚々たる方々を見ることができました。あ、あとベッドインも見ました。何回見ても引くほど面白い。おったまげ~!
概要
・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。
・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。
・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。
(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。
夜にダンス / フレンズ
2015年、それぞれ別のバンドで活動していた5人で結成されたポップバンド。
活動休止を発表したばかりのthe telephonesのベーシスト長島涼平が中心となって結成したこともあって、結成当時からけっこう話題になったのを覚えています。
そんなフレンズがバンドとして最初の1曲目に公開したのがこの「夜にダンス」なんですが、新人バンドらしからぬハイクオリティーな楽曲でいきなりヒットをかましてしまいました。それもそのはずこの方たちは新人バンドの皮を被ったゴリゴリのプロ集団ですから。
そんなプロ集団の代表曲であるこの曲なんですが、実は音楽をあまり知らない人に物凄く分かりやすく作られている仕掛けがあるので紹介したいと思います。
ちなみに音楽好きの友達はフレンズのことを「20代のOLしか聴いてはいけない音楽」と言っていました。偏見がすごい。
確信犯のポップセンス
そもそも僕はこのバンドを出鱈目に詳しいわけではないので、割とにわか目線で書かせて頂きますがご了承くださいませ。
フレンズで作詞作曲を務めているのがボーカル兼デブ(ライブで自らおっしゃってました)担当のひろせひろせさんなんですが、長年音楽ばっかり聴いているともう分かるんですよね。こういうポップな見た目でひょうきんなパフォーマンスをしている方は間違いなく物凄い頭の良い策士です。
こういう方は基本的にお笑い芸人のネタ書く方の脳みそをしているので、バンドをよりまとまったイメージにする為だったり単純にキャラ付けだったり全体像をうまく捉えて自分の役割を遂行できるタイプ。あとキレるとめちゃくちゃ怖い。
やっぱりこういう方が書く曲って、ものすごく方向性が分かりやすくてターゲット層がはっきりしていると思っていて。しかも丁度2016年頃から流行り出した「オシャレな夜のシティポップ」的要素もバッチリ組み込んでいて、最早ヒットしない方がおかしいぐらいな完璧なマーケティング。
こういう事を言うと「いや、あの~営業妨害ですね(笑)」とか言いながら汗を拭き始めるのでその弱った所に顎フックかませば1発KOです。
更に先程挙げた「分かりやすさ」という点でもこの曲はピカイチだなと思っていて、具体的に言うとイントロなんですね。
作曲では「イントロで人の心をつかむ名イントロに名曲アリ」を信条としている。(Wikipediaより)
らしいですよ。
要するにバンドで最初に上げる勝負曲でこの信条を破るはずがないでしょうと。誰が聴いてもまず「オシャレ」という印象がつくイントロですよね。
このコード進行自体がめちゃくちゃ斬新という訳ではないですが、ポップスではあまり馴染みのない進行で、ジャズやAORというジャンルで使われる事の多い進行ですね。
そのオシャレ進行に乗っかる印象的な「トゥーットゥーットゥー」というコーラスなんですが、実はここの音階がめちゃくちゃキーポイントなんす。なんすよ。
イントロのコード進行AM7 / Am7 / G#m7 / Cm7 / に対してコーラスの音階が G# / G / F# D# / E / っていう風に動くんですけど、最初の2つのコードのルート音が両方Aに対してセブンス→シックスというテンションの役割を持つ音階で下っていってるんです。
(何を言っているかさっぱり分からない方は全く気にすることなく次の文章を読み進めてくださいませ)
要するにこのコーラスが入る事によって、イントロのコード進行のお洒落感がより強調されて分かりやすくなるという事。
”セブンスとかシックスの音階”っていうのはそういう物くらいの認識で構いません。
こういった音楽理論的な仕掛けまで駆使して世間にオシャレ夜シティポップを浸透させたひろせひろせという男がどれだけすごいか分かっていただけたと思います。
そして皆さんがもうあのひょうきんな方を、本当はゴリゴリの戦略家なんだなと、ちょっと気を遣った目線でしか見れなくなったのなら、僕はこの記事を書いてきた甲斐があったと思えるのです。
***
今回はここまで。次回は「す」から始まる名曲を紹介します。