しりとり名曲紹介 No.10 [traveling / 宇多田ヒカル]
あっという間に、このしりとり名曲紹介も10曲目に突入しました。
毎週水曜日と言っておきながら、すっぽかしたり考えすぎて一週間延ばしたりしていますが、趣味なので勝手に許してます。
ここ最近は作曲と仕事でSuchmosとジャアバーボンズを見間違えるぐらいには忙しかったのですが、ようやく落ち着いてきたのでまたボキボキ更新していきたいと思います。
末永くよろしくお願いします。
概要
・邦楽オタクの僕が、人生で特に影響を受けた楽曲、音楽ファンなら絶対に聴くべき往年の名曲、時代と共に完全に忘れられつつある超・隠れた名曲を紹介するコーナーです。
・その名の通り紹介する楽曲の名前を、しりとりで繋いでいくというマゾ縛りとなっています。
・基本的にアーティストの被りは無し、「ん」で終わる曲は1つ前の文字を繋いで続行します。
(例)にんじゃりばんばん → 「ば」から始まる曲を次回紹介。
1998年に15歳でデビューし、翌年発売のアルバム「First Love」は国内アルバム売上歴代1位を記録している、もはや説明不要のシンガーソングライター。
宇多田ヒカルがどれほど凄いアーティストかなんて、世の8割強は分かっていると思っているので特に言う事も無いかもなぁと思っていたのですが、やっぱりこの曲については語っておかないと整理がつかないので少しだけ語りたいと思います。
二十歳で作る曲のクオリティじゃねぇ
皆さんは成人式並びに同窓会には参加しましたか。
僕は中学の同窓会に参加しましたが、中学の頃僕のことを少し好きでいてくれた女の子が、同窓会で会ったら酒灼けしたカスカスの声の化粧バサバサのキャバ嬢みたいになっていた事があります。
一般的な二十歳なんて、ギリギリ善悪の区別もつかないような輩が山ほどいるし、自分が普段聴いている音楽の何が良くて何が悪いかも分からないのが普通の人間だと思うんですよ。
話を戻しますが、宇多田ヒカルさんは15歳でソロデビュー。
16歳で日本一アルバムを売り、20歳でこの曲を作っています。すげえ。同窓会で隣にこんな人が居たら僕は韋駄天の如く地を馳せ、家に帰ることでしょう。
とはいえ音楽の才能は8割〜9割が遺伝と言われているので、こんなスーパーアーティストの血を受け継いだ人と真っ向から勝負しようなんて思わないですけど、やっぱ悔しいじゃん!?
一世代に一人ぐらいはそういう天才が必ずいて、同じ世代でも椎名林檎は二十歳で歌舞伎町の女王を作っているし、野田洋次郎は二十歳で有心論を作っているし、Takaは二十一歳で完全感覚Dreamerを作っているし、ぼくりりは二十歳でぶっ壊れた。
そして、これだけのメンツを並べてもやはり桁が違うのがヒッキーさん。
彼女は二十歳でtravelingを作っているだけでなく、その四年も前に日本一アルバムを売り上げているわけで、ヒットにヒットを重ねてようやく成人式。
なんやねんそれ。ある意味一番荒れてる新成人やんけ。
キャッチーの塊
実はこの曲、作曲テクニックという視点で見ればそこまで派手な事はしていないんですね。
この方は作曲ガチ勢なので、急にあり得ないテンションコードを入れてきたり、コーラスの和音がめちゃくちゃ凝ってたりするのですが(曲でいうと真夏の通り雨とか)、この曲は基本的に同じコード進行の繰り返しがメインの曲です。
この曲の恐ろしさとも言える最大の魅力は、歌メロのキャッチーさにあると思っています。
とても耳がいい方なら分かるかもしれないのですが、この曲って明るいノリノリなナンバーの筈なのに、なんか不気味なくらい静かな気がしません?
唄声を除いたカラオケバージョンなんかを聴いていると、Aメロなんてベースとドラム以外ほぼ音が鳴ってないし、サビの上モノ(ベースとドラム以外の和音などの音色の事。普通はギターとかピアノが入る)の音は、ほぼコーラスの和音と細いシンセのソロの音しか入ってないんですね。
さすがにここ最近のEDMのような音圧はこの時代には無いにしても、他のアーティストと比べても音数が少ないのが宇多田ヒカルの特徴でもあります。
意図的かはわかりませんが、この手法は宇多田ヒカルがよく使うやり方で、「Beautiful World」なんかも明らかにバッキングの音数は少ないですよね。
元々ルーツがR&Bだという事もありますが、歌メロがキャッチーな分、余計な音を入れない指向は間違いなくあると思っています。
気付いていなかった方も、もう一度聴いてみると何となく分かるかと思います。
まあ歌メロのキャッチーさに関してはさすがに了承済みですよね。おいこれのどこがキャッチーなんだね説明しやがれと文句を言われても知らん。
まずイントロの〽タッタールの時点で完璧に近いキャッチーさ。何気に最初のタの音がF#でコードCM7に対してフラットファイブの役割を果たしているのも及第点。
そしてBメロでそのタッタールに歌詞が乗り、サビの頭に合いの手のようなフレーズを入れるという大発明。
まさに近未来の乗り物に乗っているようなワクワク感とスピード感。
また歌詞の韻の踏み方も素晴らしく、Aメロ「タクシーもすぐ捕まる(飛び乗る)」とか「不景気で困ります(閉めます)」と、韻を踏みながらストーリーを進める辺りほんと仕事ができる人。
更にBメロのサビ前には「平家物語」の文章が引用されているのも有名ですよね。
こういう細かいアイデアを盛り込める辺りもさすが。
もう減点のしようがないですね。参りました。立派に成人してください。
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6年の活動休止を経て、またアーティスト活動を再開した宇多田ヒカルですが、まだ36歳というのが驚き。[ALEXANDROS]の川上洋平と同い年らしいです。
僕が小学生にもなってない頃に母の車の中でかかっていた宇多田ヒカルを、まさかコード進行から解説する日が来るとは思いませんでした。
僕はまだまだ先になりそうですが、とにかく良いメロディーを良い歌声で歌ってもらって評価されるよう努力していく所存でございます。
今回はこの辺で。次回は「ぐ」から始まる名曲を紹介します。